今回紹介する書籍
書名:王二的経済学故事
著者:郭凱
出版社:浙江人民出版社
出版時期:2012年7月

 今月は『王二的経済学故事(王二の経済学物語)』を紹介してきた。王二という架空の人物にまつわる寓話を題材に現在の中国における政治や経済の問題を読み解いた評論集である。

 今回は最終回。本書のうち「発展モデルの争い」という部分を紹介したい。「中国模式」という言葉をご存じの読者も多いと思う。従来の発展モデルとは異なる中国独自の発展モデルを指す。その独自性が時には「ごり押し」ともとられ、時には「軌跡の原動力」ともとられてきた。本書ではその独自の発展モデルを取り上げ、これからの中国の発展の方向性について論じている。

 この章は「王二の夜更かし、GDP至上主義と構造のねじれ」「王二の過重労働と中国のスピードダウン」「王二家の改装と再構築への焦り」「健康の秘訣」「政府主導と中国モデル」という項目からなっている。章名からも分かるように、本書著者はこのままのスピード、やり方で中国の発展を続けることはできないと考えている。また「中国模式」という言葉からも感じられるように、中国の発展モデルは独特のもので従来の発展モデルとは異なるとの見方も根強い。しかし、本書では、1989年に米国の経済学者ジョン・ウイリアムソン氏が定式化した「ワシントン・コンセンサス」と中国の経済政策を一致するものとし、決して中国の発展の道筋が特殊なものではないと述べている。