コミュニティー施設の建設進む

 第2のコミュニティー型は、より積極的に住民同士の交流を深めるために、住居や教育システムにまで踏み込むプロジェクトである。高齢者同士だけでなく、若者や子供含めた広い世代のコミュニティーを形成しようとするのが近年のトレンドである。

 ドイツ政府が推進している「多世代の家」が典型である。様々な世代の住民が一緒に暮らすことで、地域密着型の情報交換や交流の場を目指すもので、ドイツ全国に500カ所の施設を建設中である。

「一の橋バイオビレッジ」内のコレクティブハウス構成図
図 「一の橋バイオビレッジ」内のコレクティブハウス構成図
(出典:北海道下川町)

 日本でも環境未来都市構想の中で、コミュニティー重視の高齢者向け住宅を建設する計画が進んでいる。例えば、北海道下川町では、下川町一の橋地区に森林バイオマスの熱供給施設に加えて、高齢者を含めた住民が集まってコミュニティーを作りながら住む集住化住宅(コレクティブハウス)を合わせた施設群「一の橋バイオビレッジ」が2013年5月に完成した(図)。コレクティブハウスは、30戸が建設されている。高齢者向けにバリアフリーとなっており、居住者が集ってコミュニティーをつくる仕掛けが施されている。

住民同士の交流通じて健康維持

 第3のICT活用型は、住民の生体情報を計測してICTで管理する手法をベースに、コミュニティーの中で高齢者を含めた住民同士が交流しながら健康維持を図るプロジェクトである。

 例えば、宮城県栗原市と東京都奥多摩町では、慶応義塾大学が中心になって、テレビ電話を集会所に置いて、遠隔診療を行うとともに、高齢者が集会所に足を運ぶ機会を増やして住民同士の交流を促すプロジェクトが行われている。

 このうち、宮城県栗原市では2010年から遠隔医療がスタート。最初は53名の参加だったが、現在は約70名の高齢者が参加している。歩数計を配布して、日々の歩数とともに、体重計と体温計、血圧計の測定データが収集できる仕組みを構築している。これらの収集したデータを医者が見ながら、健康についてアドバイスしている。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。