[9]改善後の姿はあるが、移行計画、トレーニング計画がない

 [8]の「改善案が正論ではあるが、実現性が低い」に続いて製品標準化を例に取ろう。新たに製品プラットフォームの開発設計プロセスを構築したが、設計者が図面設計文化から脱却できていない、といったケースである。モジュール・部品構成の設計スキルが不足したままでは、効果的な製品プラットフォーム開発は行えないのである。しかも、スキル不足を認識しているにも関わらず、教育時間が確保できていない場合も多い。

 新規システムの操作などに関しては、移行計画やトレーニング計画が立案、推進されることが比較的多いが、新規業務についても同様の対応を行っていかなければ、それを定着させ、効果を獲得することは難しい。

[10]必要なデータを検討する際、QCDを同時に検討していない

 PLMシステム導入の際にE-BOMに必要なデータとして、コスト(C)や品質(Q)とのリンクは考えているが、プロジェクト管理(D)とのリンクは検討していないといった状況である。[4]「見える化に無意味に工数を掛けている」や[6]「改善案が事務作業中心」と同様に、システム導入を前提とした業務改革の場合に起こりがちな例である。

 PLMシステムベンダーによっては、BOMとプロジェクト管理の連携について積極的な提案ができないところもある。言うまでもなくPLMの考え方からすると、QCD向上のためには製品ライフサイクルにわたってQCDを同時に検討し、QCD間のトレードオフを解決していくことが必要である。QCDを別々に検討していたのでは、効果的な業務改革は望めない。

 以上10項目のチェック事項を挙げたが、これらに照らして読者の皆様の企業の状況はいかがだろうか。この10項目は、10点満点を取るべきチェック項目である。このような点で業務改革の水準が低下することがないよう、ご留意いただければと思う。