今回紹介する書籍
書名:我所理解的生活
著者:韓寒
出版社:浙江文芸出版社
出版時期:2013年1月

 今月ご紹介している一冊は、若手人気作家韓寒の「我所理解的生活(私にとって生活とは)」。今回以降は、韓寒が2011年12月に発表したブログをもとにした「韓三篇」と呼ばれる三つの文章を紹介する。この3本のブログは多くの議論を巻き起こした韓寒ブログの中の名作である。日本でいうウィキペディアに当たる「百度百科」によると、この三つの文章の概要は以下のようになる。

この3本の文章で、韓寒はこの国のそれぞれの階層の隔たりを指摘し、階層間の要望には大きな違いがあり、普遍的な正義を表すとみられる「自由」「民主」といった言葉であっても人によってその意味するところが違うことを指摘している。

 「韓三篇」では「自由」「民主」「革命」という三つのテーマに正面から切り込んでいる。

 では、「革命」の項を読んでみよう。刺激的な記事(韓寒の文章は内容だけではなく、表現も過激だ。喩えにわざわざ性的な表現を盛り込むなど、読んでいると眉をひそめてしまうような描写も少なくない)で知られる韓寒ではあるが、「革命」に対してはむしろ保守的な態度をとっており、彼の基本姿勢は最初の一文に表れている。

率直に言って、劇的な変革は現在の中国にとって決して賢い選択ではない。

その理由を、韓寒は以下のように述べる。

もし本当に急激な変革が起こった場合、一定の段階まで行くと、学生、エリート、インテリ、農民、労働者の考えが一致しなくなるだろう。また、上記以外にも、我々が見落としがちな人たちがいる。それは貧困層だ。ここに属する人は約2億5000万人いる。彼らはインターネットを使わないので、平時には目立たない。

 急激な改革をする際に、膨れ上がった格差を含む様々な中国国内の「差異」は大きな問題になるだろう。韓寒はその中で必ず新しいリーダーが生まれるが、そのリーダーは文芸を愛するような青年たち(自分を含めて)が期待するような温厚なリーダーではあり得ず、文学青年たちが支持するようなリーダーは1週間もしないうちにはじき出されてしまうだろうと予言している。確かにあの膨大な人口を混乱時にまとめようとするならそのリーダーには普通では考えられないパワーが求められる。また、ある時期までは理念で動いていた「革命」も最後には「金」の問題になるとも書いている。そして、その中で最も割を食うのがいわゆる「中間層」なのだそうだ。

 その混乱を避けるためにも革命は時間をかけてゆっくりと行うべきだというのが韓寒の主な主張である。このように全体的な主張は穏便なものだが、以下のように選挙、多党制など政治的にデリケートな問題にも触れており、ここが若者の支持を集める理由なのかもしれない。

多くの人は、中国が急いで解決すべき課題は一人が一票ずつもち主席を選出することだと思っているだろうが、実はそれは喫緊の課題ではない。「民主」とは複雑かつ実現困難だが、必然的な社会の過程である。決して「普通選挙」「多党制」といった耳にやさしく響く言葉によって簡単に成し遂げ得るものではないのである。