今回紹介する書籍
書名:我所理解的生活
著者:韓寒
出版社:浙江文芸出版社
出版時期:2013年1月

 今月ご紹介する一冊は、若手人気作家韓寒の「我所理解的生活(私にとって生活とは)」。韓寒は1982年9月生まれのいわゆる「80后(80年代生まれを指す)作家」である。2000年に出版したデビュー作『三重門』は200万部以上を売る大ヒットとなり、現代中国を代表する作家として2010年には『タイム』誌で「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれている。最近では小説家というより、レーサー、人気ブロガーとして注目を集めている。本書はその韓寒による本年1月に出版されたエッセイ集である。

 韓寒の文章は批判精神旺盛で知られ、その矛先は政府や社会へも向けられている。

 かつて、韓寒が中国の反日デモに批判的な文章を発表したと言って話題になったことがあるが、本書を読む限り特に親日的とも反日的も言えない。ただ、彼の目は大変冷静で、文章に説得力がある。彼のマイクロブログの読者が2200万人以上いるのも納得できる。

 では、本書に収められた「跳出棋盘的棋子(将棋盤から飛び出した駒)」という文章をご紹介していこう。2012年の9月17日の騰訊ブログに乗せられた文章から一部を抜粋したものだ。

私はよく友人から自分に合った車を教えてくれと頼まれるが、そんな時にはドイツ車を推薦することが多い。しかし、現在でも多くの人が日本車にするという。日本車を買うときに日本が中国の領土を奪っていることを支持するかどうかなどということを気にする人はいない。ただ、実際にお得で、燃費が良く、修理しやすいかどうかだけが問題なのだ。ここ1~2年で、ぼくの周囲で日本車を買う友人は減ったが、これは単に為替の問題で、もはや日本車は割安ではなく、ドイツの「ベンツ」や「BMW」や「アウディ」でも10数万から20万程度で手に入る。金というのは自分で苦労して稼ぐものだから『お得かどうか』が第一なのだ。だから社会のストレスが大きくなるほど、日本車の魅力は増すだろう。

 カーレーサーである韓寒の車に関する記述には説得力がある。このように彼はヒステリックになることなく、淡々と日本車に対する自分の見方を述べている。また、同じ反日デモについて書かれた記事の別の項ではこのようにも書いている。

メディアはこのように同胞の利益を著しく阻害するようなニュースを報道するときに、「愛国」という2文字を使うのを止めることを提案する。国はこのように愛する者だろうか。この世界で人々の尊敬を集める国もあれば、人々に恐れられる国もある。このようなことを続けて行けば、我が国は人様から笑われるしかなくなってしまうかもしれない。

 他にも本文に収められた記事には示唆に富むものが多い。次回以降、本書からいくつか面白い作品を選んでご紹介していこうと思う。