――昨今、調達・購買を変えようとしているメーカーが増えています。「集中購買」などは代表例ですが、設計や製造の現場に対して、調達・購買部門の存在感が高まっています。そもそも、メーカーとしてはどういった問題意識で調達・購買の改革に力を注いでいるのでしょうか。
坂口氏:「集中購買」自体は古くからある概念ではあります。ただし、大まかな流れでいうと、2000年代の初頭ぐらいに事業の「選択と集中」があり、それに伴う形で「集中購買」がさかんに喧伝(けんでん)されました。その問題点は後で話しますが、事業の「集中」を進める中で、調達・購買活動も集中・集約化しなければならないと「集中購買」という活動に発展していったのです。
――そんな経緯だったのですか。
坂口氏:その中でも有名なのは、三菱電機とソニーでした。これからは調達・購買部門による主導の下、厳選されたサプライヤーに対して集中的に仕事を与えていくという内容でした。三菱電機では「Σ21(シグマ21)」、ソニーでは「SHARK」という活動がそれに該当します。
要するに、1社または数社のサプライヤーに量をまとめて発注すれば関係性が向上し、コストも安くなるという発想です。(価格入札によって最安値を提示したサプライヤーに発注する)リバース・オークションという言葉が出てきたのもこの頃でした。
その後、多くのメーカーも追従しました。ただし、当時のそうした動きに対する最近の問題意識として、量をまとめて交渉すれば安くなるのは分かったけれども、果たしてその安い調達品は機能するのかということがあります。前出の2社の問題ではありませんが、一般に「安かろう悪かろう」ではないかと。そもそも、本当に安いかどうかも怪しいわけです。