法則6:改革への関心を持続する経営トップ

 ものづくり改革成功企業では、ものづくり改革に対する経営トップの関与が強い。部門内の改善活動であれば部門長の参画があればよいが、企画⇒設計⇒調達⇒製造のような、部門横断的なものづくりプロセス改革の場合には、経営トップの強いリーダーシップがないとプロジェクトとして成立しない。当然のことながら、全社プロジェクトの場合、企画書の体制図には経営トップがプロジェクト・オーナーとして記載されている。

 複数の部門にまたがって行われるものづくり改革プロジェクトでは、3カ月程度の短期間で成果が出てプロセスが定着できる、ということはまずない。たとえば企画フェーズで3カ月、準備とトライアルで半年、本番移行してから定着するまでさらに半年、といった具合に、ある一定の成果が見えてくるまでに最低でも1年くらいはかかるものだ。成功企業の経営トップの多くは、これを辛抱強く見守り、支援を継続しているのである。

 逆に改革の推進力が低下する企業では、経営トップの関与度合いも次第に低下していくことが多いようだ。企画フェーズのキックオフや最終報告会までは経営トップが参画し、冒頭のあいさつや最後の講評を行う。しかし、実行フェーズに入ると報告会に参加する頻度も少なくなり、次第にフェードアウトしてしまうのである。経営トップの多忙さやプロジェクトの複雑化、詳細化による影響も多いと思うが、社員やワーキングメンバーは経営トップの改革活動への関心の持ち方に敏感なものだ。

 筆者は過去の経験から、経営トップの関与が必要な期間は1年半であると考えている。これは、新しいものづくりプロセスの企画を開始してから、それが定着してある程度成果が見え、経営トップの関与がなくても自立遂行できる状態になるまでの期間を指している。これ以上短くすることも難しいし、これ以上時間がかかってもワーキングメンバーのモチベーションが維持できない、という経験則から割り出した期間である。

 成功企業に共通する6番目の法則は、経営トップの、ものづくり改革プロジェクトへの関与が一定期間持続することだ。