前回から、スマートフォン(スマホ)を用いたクレジットカード決済サービス「Coiney」を紹介しています。このサービスを手掛けるベンチャー企業、コイニーの創業者である佐俣奈緒子氏が起業に至るまでの経緯や、開発チームを集める手法を見てきました。(前回のコラム「「知らなかった」からこそ、前に進めた」)

 スマホを用いたクレジットカード決済は、小売店の店頭でクレジットカードを使って代金を支払う際の決済端末としてスマホを使うサービスです。小型のカードリーダーをスマホに取り付け、専用のスマホ向けのアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)を導入することでスマホを決済端末にします。従来の決済端末よりも小型で安価、加えて移動通信によって取り扱いの自由度を高められることで注目を集めています。

 コイニーは会社設立からまだ1年半ほど。金融というリスクの高い分野に、あえて踏み込んで起業したベンチャー企業です。しかも、ハードウエア開発、スマホ・アプリ、システム開発のすべてを抱えて起業しました。たった4人でサービスに必要な技術をほぼ6カ月で開発し、大手クレジットカード会社との資本業務提携にもこぎ着けました。その立ち上げの段階から見えてきたヒットの要諦は、次の二つでした。

■前回の「ヒットの要諦」
その1:
開発対象の製品やサービスの周辺情報を調べ過ぎるな!
その2:
大きなビジョンを熱くメンバーに伝え、方向性を共有せよ!

たった4人でスピード開発

 今回は、コイニーがスマホを用いたクレジットカード決済サービスを、どのようにスピード開発したのか。そのストーリーを分析していきたいと思います。

 Coineyの開発は、2012年3月末に会社を設立した後にスタートしました。初期の開発メンバーは、社長の佐俣氏を含め、前回の最後に紹介した3人の合計4人でした。まず、最初にチームに入ったデザイナーの松本隆応氏。そして、ハードウエア担当の技術者である久下玄氏、システム開発担当の技術者で現在はCTO(最高技術責任者)を務めるDavid Asikin氏です。

 体験版サイトをオープンしたのは、2012年6月のこと。潜在顧客の反応や感触を確かめ、同年10月末に一般の店舗からの申し込みを受け始めました。この間、創業からほぼ6カ月です。

 立ち上げ当初にかなり注目を集めて予想以上の申込みが殺到しました。このため、申込みの受付を一旦停止。その間に社員数を増やし体制を強化しています。いくつかの店舗での試験的な運用を経て、2013年4月から本格的に受付を再開しました。現在は、利用店舗の拡大に向けた熾烈な戦いを、同様のサービスを始めた大手企業と繰り広げています。

  時系列でみると順風満帆に開発を行い、サービスをスタートしたように見えます。しかし、実際は、やはり簡単に開発が進んだわけではないようです。