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なぜ、ソニーCSLは創造的であり続けられるのか

個性派集団をまとめ上げる尖った個、北野宏明氏(下)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2013/10/21 00:00
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 前回からソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)の代表取締役社長を務める北野宏明氏を紹介している。自らもコンピュータ・サイエンスやロボット、システム・バイオロジー(生物学)などで多彩な成果を上げた敏腕研究者であると同時に、同研究所で多くの著名かつ華麗なる個性派研究者をまとめるマネジメント役でもある。

北野 宏明氏。ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長兼所長。
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 学生時代には、国際基督教大学(ICU)の学際的な雰囲気に触れ、物理学と政策ディベートに明け暮れた。その北野氏がICUの卒業後に選んだのはNECだった。そこで同氏は、現場を体験した。NECでは、ソフトウエア生産技術の研究所に配属。ソフトウエア開発の品質管理技術や、生産支援システムの開発を手掛け、顧客とのやり取りや展示会の説明員もこなした。

 「正直なところ、当時はあまり面白いと思っていなかったんです。でも、今考えると、ものづくりや顧客との接点を体験したことはものすごく役立っています。研究だけをやっていたら、現場の重要性を知らないままだったでしょう」

 その後、米Carnegie Mellon University(CMU)に社費で1年間留学し、そのまま現地の駐在員として研究を続けることになる。そのころから同時通訳可能な音声翻訳システムや超並列計算機、遺伝的アルゴリズムなどの研究を本格化した。その間、京都大学で博士号を取得。1993年の夏に日本に戻ってソニーCSLに入社し、現在に至っている。

 「NECから次に移ろうという時に他にも選択肢はあったのですが、まあ2~3年在籍して、また米国に戻ってもいいかと思っていたんです。そしたら、辞める機会を失って、まだソニーCSLにいるという…」と、北野氏は笑う。

 その北野氏に、ソニーCSLのマネジメントについて聞いてみた。さまざまな分野の知能が集まっている研究所では、何が共通の軸や方向性になっているのか。

 この問いに対する北野氏の回答は、極めて簡単かつ明瞭だ。「世の中を変える研究をやってほしい」。それだけである。ただ、「世の中を変える研究」とは、研究内容が革新的で社会に大きなインパクトを与えるということだけではない。研究者自身が自分で世の中を変えるということを意味している。自分は基礎研究を手掛けて論文を書くが、実際の具現化は別の人ということではない。研究成果が社会に受け入れられ、世の中を変える最後のところまで自分でやってほしいというわけだ。

 「例えば、ガーナで進めているエネルギー関連の研究プロジェクトでは、研究者チームが現地に入り込んでプロデュースしています。農業の研究でも実際にフランスで農地を借りて、研究者が農家と一緒に作物を市場で売っている。着想から実際に開発して、現場に持っていき、社会的なプロジェクトとして世の中を変えていく。そこまでやる人がソニーCSLの研究者の条件です」と、北野氏は話す。

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