内弁慶から脱却できるか

 ただし、W3Cの標準化に詳しい関係者は、「今のところ、標準化活動の中でハイブリッドキャストを売り込むための情報発信に積極的には見えない」と指摘する。「BMLが登場した時にも、国際標準の『XHTML』をベースにしているという同じような話が喧伝された。ハイブリッドキャストが第2のBMLにならなければいいが…」(同上)。

 テレビ・メーカーにとっては、既にあるテレビ向けチップ・セットやHTML5ブラウザなどの要素部品を組み合わせることである程度、ハイブリッドキャストに対応できるという意見もある。それでも、テレビ事業の黒字化に悩む国内メーカーからすると、「国内だけ、しかもさらにその一部にとどまる可能性があるサービスのために、どこまで開発リソースを割くべきなのか」というところが本音かもしれない。

 他の国にはない先端的なサービスを始めて一周回ってきたら、世界が別の形で追い付き、追い抜いていった。このいつか見た構図を繰り返さないためには、技術仕様の国際化の他にも、HDD録画で当たり前になったタイムシフト視聴ヘの対応など、視聴者の琴線に触れるサービスの開発に向けたさまざまな課題が横たわっている。何より、スピード感を重視するならば、インターネット関連企業との連携は必須だろう。

 実現できるサービスの先進性をうまく打ち出せれば、ハイブリッドキャストは国内の放送業界やメーカーにとって世界戦略の大きな強みになるポテンシャルを秘めている。この2~3年、世界のスマートテレビの取り組みは、掛け声だけで決してうまく進んでいないことも事実だ。そこに向けてテレビの新しい面白さと優れた技術をアピールし、内弁慶から脱却する取り組みが問われている。