蓄積技術の活用でさらに…

 イプシロンロケットでは、こうした新技術の投入に加え、日本がこれまで蓄積してきた技術を活用することで信頼性の向上や低コスト化を図っている。

 補足しておくと、イプシロンロケットは基本的には、全段に固体燃料を使った3段式ロケットだ。ただし、オプション形態として、最上段に液体燃料を使うステージ(小型液体ステージ)を追加できるようになっている。試験機では、このオプション形態を採用している。

 蓄積した技術を活用しているのは、例えば、2段目と3段目の推力源となる固体モータだ。M-Ⅴロケットで使った高性能モータを改良して使う。

 この改良の目的は造りやすさの追求と低コスト化。同モータでは、推進剤を入れる容器(モータケース)に炭素繊維強化プラスチックを使っているが、その製造方法を変えた。従来は、「樹脂をしみこませた炭素繊維(プリプレグ)を型の周りに何重にも巻いて、その後、それらを高圧で押し付けながら高温で焼き固める」といった方法を用いていたが、「圧力を掛けなくても接着剤が浸透して固まるように改良した」という。

 これにより、大掛かりな圧力釜が不要となって低コスト化を図れた他、製造方法の簡易化を実現できたという。もちろん、既存技術をベースとすることで、信頼性の向上や開発費の圧縮による低コスト化も可能になっている。

 1段目の補助的な推力源として使う補助ブースターも既存技術を活用したものだ。ただし、こちらは2段式の液体燃料ロケットである「H-ⅡAロケット」からの流用品だ。H-ⅡAロケットで1段目の補助的推力源として使った固体ロケットブースター(SRB:Solid Rocket Booster)「SRB-A」を採用している。電子機器や部品の中にもH-ⅡAロケットからの流用品もあり、H-ⅡAロケットとの機器・部品の共通化で信頼性の向上や低コスト化をさらに推進している。