消費者に直接触れる機会がなくなる

 これに反して、以前と同じB2C事業を行っている企業は環境の変化に見舞われています。例えば次の記事が象徴的です。
「富士通、219億円の最終赤字4~6月 携帯・パソコン不振」(7月31日付 日本経済新聞朝刊)

 パソコンの不振は富士通だけではなく、米Dell社や台湾ASUSTeK Computer社(華碩電脳、エイスース)でも状況は同じです。タブレットという情報消費に向いた安価な機器がiPad以降に数多く現れたことで、コンテンツを創造する目的以外の利用者がパソコンからタブレットへと移っていった外部環境の大きな変化も原因の一つでしょう。

 この他、シャープが液晶パネルを韓国Samsung Electronics社に供給するという提携も発表され、B2Bビジネスへのシフトが顕著です。

 私は、日本の技術が活かされる場として、B2Bビジネスをまったく否定はしていません。それどころか、これはこれでどんどん進めないといけないと思っています。ただ、世界に売れる日本ブランド製品が少なくなることは、消費者という直接に触れるカスタマーを抱えるビジネスを手放すことになります。これは、ビジネスの主体性、市場の支配力が弱まっていくことを意味しており、この点を私は危惧しているのです。