提言1:日本はB2Cビジネスをあきらめてよいのか?

 かつて日本のGDP(国内総生産)は9割が内需、1割が外需という時期がありました。外需の内7割を資本財や生産財、すなわちB2Bビジネスが占めており、3割が消費財という状況が長く続きました。つまりGDPのわずか3%が家電や自動車などの消費財だったのです。ところが、その3%の製品を支える部材を供給する企業群が、ピラミッドのように形成されていました。家電や自動車が海外で売れると、その部品を供給する企業も栄えるという構造です。

 ところが数年前から超円高になり、生産が新興国にシフトする流れが加速されるようになりました。さらに、デジタル化が進み、極論すると部品さえあれば誰でも組み立てられるようになった家電製品のシェアは、家電産業が立ち上がってきた新興国に奪われていきます。

 さらに米国では、「iPad」や「iPhone」といったそれまでなかった製品を米Apple社が創造し、米Google社などが新サービスをどんどんと生み出してきました。残念ながらその間、日本企業、特に家電企業はなすすべもなくシェアを奪われていったのです。

 最近の新聞記事で気になるタイトルを少し挙げてみたいと思います。
「医療機器の新会社、16日設立と発表 オリンパスとソニー」(4月4日付 日本経済新聞朝刊)
「富士フイルム、純利益6倍149億円 4~6月 医療など好調」(7月31日付 日本経済新聞朝刊)

 これらはB2Cビジネスを行っていた企業が、医療というB2B寄りに舵を切った例です。ソニー、富士フィルムといった企業が、以前とは違ったドメインに進出しようとしています。

 他にスマホ部品が活況を呈していたり、パナソニックが自動車用バッテリー事業に注力したりという報道も見られます。多くのB2B事業がチャンスをつかもうと活発に動いている様子が伝わってきます。