クルマ 自動車の最新技術を追う
 

サイバー・フィジカル・システムの時代

鶴原 吉郎=日経Automotive Technology
2013/08/20 19:00
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 8月の始めに、9年ぶりに米国に行きました。米National Instruments社(NI)のイベント「NIWeek 2013」に参加するためです。同イベントでは、新製品の発表や、パートナー企業によるNI関連製品の展示のほか、NI製品ユーザーによる事例発表などが3日間にわたって行われます。

 印象的だったのは、 同イベント初日の基調講演で、同社の創設者で社長兼CEO(最高経営責任者)のJames Truchard氏が、同社製品のコンセプトとして強調した「Cyber-Physical System」いう言葉です。Cyber-Physical Systemとは何か。その例としてTruchard氏が挙げたのが米Apple社の「iPhone」でした。

 iPhoneを腕時計代わりに使っている人は多いと思いますが、もちろん、iPhoneには物理的な時計は内蔵されていません。iPhoneというハードウエアと、その上で動作する時計のアプリケーションの組み合わせによって、時計という機能が実現されているのです。このように、すべてのものが、汎用的なハードウエアと、その上で動作するアプリケーションで構成されていくようになるというのが同社のビジョンです。

 その具体例が、今回のNIWeekで同社が発表した新製品の「compactRIO-9068」です。同社のcompactRIOという製品群は、マイクロプロセッサとFPGA(Field Programmable Grid Array)を内蔵した本体と、様々な種類の入出力ユニットを組み合わせ、計測や制御のためのプログラムを組み込むことで、計測機器や生産設備のコントローラとして使うことができます。

 最近では、車載ECU(電子制御ユニット)のソフトウエア開発において、開発途中のソフトウエアを実装してテストするためのハードウエア「ラピッド・プロトタイピング・コントローラ」としても使われ始めています。つまり、汎用的なハードウエアと、その上で動作するアプリケーションの組み合わせによって、非常に多様な用途に使うことができるのが同製品の特徴です。今回発表した9068はその最新版で、処理能力を従来の約4倍に向上させたのが特徴です。

 NIはcompactRIO上で動作するアプリケーションを開発するためのグラフィカルなプログラム言語「LabVIEW」や、FPGAをプログラムするための言語「LabVIEW FPGA」も商品化しており、計測・制御分野におけるCyber-Physical Systemを開発するためのツールをトータルで提供しているわけです。

 ここでNIの例を持ちだしたのは、クルマも徐々にCyber-Physical Systemに近づくのが必然だと感じているからです。かつてのクルマは、走るためのいわば専用ハードウエアでした。しかし今後、クルマの電動化・電子化が進めば、アプリケーションの追加で、新しい安全機能を実現したり、メータやナビゲーションの見た目を変えたり、ということは容易にできるようになるでしょう。私の乏しい発想ではこのくらいしか思い浮かびませんでしたが、クルマをハードウエアとアプリケーションの組み合わせという目で捉えなおせば、思わぬ新しい発想が出てくるかもしれません。

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