実機レス・デバッグ・システム構築の実際

 実機を使わないでデバッグ作業ができれば、これらの問題の大半は解決する。当然、Vmechのようなシミュレータ導入に対し、生産技術者の期待は大きかった。一方、準備に時間を費やしたりスキル取得に手間がかかったりするのではないか、多様な設備開発に対して適用できるのか、といった導入への不安もあった。これに対し、導入推進担当部署は、制御基板や制御ユニットなどの標準化を進めることで、モデル化の労力を最小限に抑えた。加えて、Vmechを試験導入して効果を確認するというステップを踏んだ。

 図3にこの方針で構築した実機レス・デバッグ・システムの構成を示す。ここでは、制御用のPC、言い換えるとPC上の制御ソフトでシステム全体を制御している。モータやセンサなどの制御デバイスはVmechの仮想モデルを活用し、モータ制御の基板や入出力の制御ユニットは同社がモデルを作成、全体をシミュレーションできるようになっている。

図3●実機レス・デバッグ環境
図3●実機レス・デバッグ環境
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 製品の機構はCADの3Dモデルを基に作成できる。XVL形式を利用しているので、シミュレーション結果は高速に再現される。機構への制御命令は、制御ソフトから仮想制御ハードを経由して送られ、仮想の機構を動作させる。実機レス・デバッグ環境の画面を図4に示す。

図4●実機レス・デバッグ環境の実際
図4●実機レス・デバッグ環境の実際
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 制御基板の標準化は、さらにモジュール化の効果につながっている。標準化した制御基板ごとに仮想化ソフトをモジュール化したので、異なる構成の設備に対しても、仮想化ソフトの組み合わせだけで対応できるからである。このように同社独自の工夫により、シミュレータ導入効果がさらに高まった。