自動車産業の構造変化とPLMシステムフレームの変化動向

 自動車産業は先進各国の基幹産業として、プライムOEMの下に裾野の広い部品サプライヤーを従えた垂直統合型の構造であった。しかし、ここ10年ほどは新興国市場の拡大、新興国の自動車産業の成長を含めて、世界規模での水平分業化という大変化が生じている。さらに、近年、独VW社から始まった体系的なモジュール化戦略が世界の自動車産業共通の動向・取り組みとなって、その構造変化が加速されている。それらの変化をかいつまんで示すと、以下のようになる。

・プライムOEMとしては、コスト低減のために標準化戦略(モジュール設計による共通モジュール化やプラットフォーム、コンポーネントの共通化)を進めている。
・標準化される対象がキーコンポーネント(サブシステム)であれば、欧米日のメガサプライヤーにとっては成長の機会なので、複数のプライムOEMにモジュールを提案し、次には共同でサブシステム・インテグレーターになっていくと予想される。
・メガサプライヤーとはいえないコンポーネント・サプライヤーや型・部品・素材サプライヤーも、標準化はグローバル競争に勝ち抜き、成長する機会となる。そのために、現地生産・供給だけでなく、現地での研究・開発設計まで含めた体制を作ることが要求される。

 日本のコンポーネント・サプライヤーにとっても、これらの変化に合わせて3つの変化が新興国向け低価格車開発競争から生じており、正念場を迎えつつある。それは

・サプライヤーも、新興国拠点・現地への川上機能(企画、開発設計)の移管を進める
・現地生産化と、それに伴うコンポーネントの現地調達率が増加する
・海外調達コンポーネントを最適活用する(日本での組立車に、コストの安い海外製コンポーネントが使われる機会が増える)

 といったことである。

 上記の変化動向を踏まえ、自動車産業のPLMの変化動向を図3にて示す。

図3●自動車産業におけるPLMシステムフレームの特徴
図3●自動車産業におけるPLMシステムフレームの特徴
[画像のクリックで拡大表示]

 現在は、世界のプライムOEMのCAD・PDM・PLMは特定ベンダーによる統合システムに色分けできるし、“系列”度合いが強いコンポーネント・サプライヤーもプライムOEMと同一のシステムを選定・導入する傾向にある。その理由は、自動車産業とCAD・PDM・PLMの発展に、双方の結びつきが強い経緯による。

 日本のプライムOEMによっては【内側のシステムフレーム】は機能的に複数のCAD、PDMで棲み分けているある場合もあり、図3に示す通り【A】や【B】と、その外側[3]の設計BOMが統合的には構築されていない場合が多く、むしろ、設計の段階から生産技術部門が[4]に示した生産準備BOMを生成して工程シミュレーションなどに使い、それを次工程(調達、生産管理)に連携させている例が多い。

 PLM構築の平均的な姿は、次のようなものであろう。コンポーネント・サプライヤーのTier1、Tier2クラス(日本自動車部品工業会に属する約430社)は複数のOEM先を持っている場合が多いので、OEM先と同一のCADは保有しており、PDMも設計用メインCADのデータ管理目的で導入されている。BOMは、大規模なサプライヤーは構築済みであるが、ExcelやPDMによる部品表管理を実施している場合も多い。さらにTier3、Tier4では、CADは当然導入済みであっても、PDM、BOMは未導入であることが多い(扱うコンポーネントによってはBOMが不必要な場合もあるので、必ずしも遅れているということではない)。