今月ご紹介するのは『中国青年発展報告(2013)』。現代青年に関する調査報告、といったらいいだろうか。副題が「都市の新移民の台頭」となっており、16歳から33歳までの「都市への移民」について解説した論文集である。本書の元となる調査を行ったのは、対外貿易大学公共管理学院副教授の廉思氏率いるプロジェクトチーム。廉氏は、2009年に、『蟻族 大学卒業生聚居(集まって住むこと)村実録』という書籍を出版し、話題となった。「蟻族」とは大学は卒業したが低所得故に他人と同居する若者のことで、狭い住居に集まり暮らすその様子が蟻のようだ、ということで「蟻族」と呼ばれている。

今回紹介する書籍
基本情報
書名:中国蓝皮书 中国青年发展报告(2013) No.1 城市新移民的崛起
主編:廉思
出版社:社会科学文献出版社
出版時期:2013年6月

 本書の元となる調査は2008年から2013年にかけて、6回のアンケートやインタビューという形式で行われている。対象者は戸籍地以外に住む16歳から1980年生まれ(33歳)までの若者。いわゆる80后(パーリンホウ:1980年以降に生まれた者)、90后(ジウリンホウ:1990年以降に生まれた者)と呼ばれる世代だ。ご存じの通り、中国では農村戸籍と非農村戸籍(いわゆる都市戸籍)の2種類の戸籍があり、農村戸籍者は、制度上は都市には住めないことになっている。本書では農村戸籍の都市居住者を「郷(地方)-城(都市)」型移民、都市戸籍だがその戸籍地に住んでいない者を「城-城」型移民として、その差異にも目を向けている。

 最近でこそ、戸籍地以外の土地に住む人間にも行政の配慮が向けられるようになったが、以前は、社会保障が受けられない、居住地で子供に教育を受けさせることができない、などの多くの不都合を強いられてきた。本書によると、調査の方法や目的などにより若干違いはあるものの、最近の調査では戸籍地以外に居住する「流動人口」と呼ばれる層の人口は約2億6400万人である。ちなみに都市の住民のうち43.5%が戸籍地以外に居住しており、都市への移民の総人口に対する比率は19.6%ということである。