通信モジュールのメーカーが決まったことを受け、
通信カーナビの開発はついに本格化した。
前例がない商品だけに,価格の設定や販売方法について
さまざまな部署の英知が結集される。
インターネットに接続できる携帯電話機の普及で追い風も吹く。
2002年8月には、販売を担当する新会社も立ち上がった。
製品開発は、終盤戦を迎えた。
次々に消えていく
新会社が設立されたころ,製品の開発は終盤戦に入っていた。古賀裕治らが籍を置く川越事業所のアプリケーション・ソフトウエア開発部では,通信カーナビに搭載するさまざまなアプリケーション・ソフトウエアの評価が順次進んでいた。
今回の目玉の1つが「ポイントパーティー」である。通信カーナビを搭載するクルマ同士がお互いに自車位置を知らせ,カーナビ画面上にそれぞれの位置を表示するというもの。最大10台の車が参加できる仕組みだ。
「今からポイントパーティーの試験をやりまーす。お手すきの人は参加してみてください」
古賀の声が,アプリケーション・ソフトウエアの開発グループが陣取る部屋に響き渡った。それぞれの開発者の机上には,ソフトウエア開発用のカーナビが置いてある。それを使って,ポイントパーティーを実際に試してみるのだ。
「はーい,私,やります」
「オレも入るよ」
古賀は,少し離れた場所にいる部長にも声を掛ける。
「部長もやってみて下さい。よろしくお願いします」
「はい,了解。どんなふうになるのか,楽しみだな」
さらに古賀は電話を掛ける。
「もしもし,今から始めるのでよろしく」
車に試作機を取り付けて東北地方に出向いている同僚にも,協力してもらうのだ。
開発陣は,さっそくポイントパーティーを立ち上げる。仮想の自車位置を各人が決めて,カーナビの地図上にそれぞれの位置を映し出す。
「おっ,出た出た。これがオレかな」
「あっ,こっちも出てきたよ」
「私のは,これだ」