中野の顔も青ざめる

 畑野は何やら携帯電話機を操作し始めた。

 「ん?」

 畑野は目を見開きながら,携帯電話機の画面にグッと顔を近づけた。

 「げっ!」

 声にならない声を発したまま,畑野の顔色はみるみる曇っていった。

 「どうしたんですか」

 すぐそばにいた中野も,畑野の手の中にある携帯電話機を覗き込む。

 「ぐっ」

 中野の顔も青ざめる。

 「通話料金700円」。2人は携帯電話機の画面にクギ付けになった。どれほどの時間がたっただろう。やがて畑野は,ため息交じりにポツリとつぶやいた。

 「これじゃあ,ダメだ。使い物にならない」

 たった1時間の走行で,700円の通話料金。とんでもなく高くついたドライブだった。1回使っただけでこれじゃ,ユーザーの財布はあっという間にすっからかんだ。

 「ふーっ」

 畑野は,大きく息をついて気を取り直した。通話料金を下げるためには,どう考えても通信事業者の協力が必要だ。彼らに定額の通信料金体系を導入してもらうしか,究極の解はない。