今月ご紹介するのは『中国2013 関鍵問題』(日本語訳:中国2013年重大課題)。36本の論文からなる現代中国の分析である。「成長の悩み」「人々の生活」「変化の時」「改革の道」「社会の再建」という5つの章で構成されておりそれぞれに4~11の論文が収められている。

今回紹介する書籍
題名:中国2013 関鍵問題
著者・編者:胡舒立 王爍 主編 呉敬璉 許小年 于建嶸 等著
出版社:綫装書局
出版時期:2013年1月

 今週は、本書を概観することで中国人の現在の問題意識がどのようなポイントにあるか探ってみたい。重要なのは本書全体を俯瞰してみることである。同じテーマが形を変えて何度も論じられていればそれは現在の中国にとって重要な問題だということだ。

 本書を読んでいて気付いたのは
(1)農民、農地に関わる問題が多いこと
(2)司法改革が問題になっていること
(3)具体的かつ厳しい改革への提言が多いこと
である。他にも社会保険体制、医療改革、公務員の腐敗、国進民退(国有企業が成長し民間企業が衰退する、という意。最近の中国経済を表す言葉)など興味深い考察があったが、複数の論文にまたがって違ったアプローチで分析されていたのは主に上の3点なので、2013年の重要課題の筆頭はこの3点だとみてよいだろう。また、経済成長の失速についても多くの論考において触れられていたが、上記の3点も経済成長の失速を無関係には語れないので、その点については後述したい。

 まず、本書を通読して感じたのは農地、農民に関する問題が随所で語られているということである。都市化問題もこのカテゴリーに入れるならば6本の論文がこの点について論じており、この問題が2013年の中国において重大な問題であることが分かる。

 まず、土地問題についての論考を見てみよう。「土地の流動と農業の現代化」(張曙光)という論文は次のように始まる。