ものづくりのマネジメントを、数十年単位の長期スパンで大局的に振り返ってみると、マネジメントというものの概念がなかった時代に最初に出てきた考え方は、類似した製品を大量に生産することと、効率の高い方法を標準とすることにより効率を上げる方法だった。

 その後、顧客要求の多様化が進み、事業別、プロジェクト別、さらには個人別といった個別の目標を明確にし、それぞれ適切な手段を柔軟に選択する、プロジェクティブな形態で対応するやり方が増えていった。しかし、このような個別の努力による対応はやがて限界を迎え、組織的な取り組みの水準が成否を分けるようになってきた。そのため、いま改めて標準化の重要性が高まっている。

 標準化とは、「自由に放置すれば多様化する事柄を、利便性向上やコストダウン、効率化などの目的のために秩序化すること」である。開発設計業務は創造性が要求される業務であるため、標準化が比較的進みにくく、かつ不適切な標準化がデメリットを発生させる可能性も高い。しかし、近年の極めて厳しい事業環境の中では、開発設計業務における標準化も、リスクをマネジメントしながら進めなければならない重要事項である。開発設計業務領域における標準化対象としては、以下の4点が挙げられる(表1)。

表1●開発設計業務領域における標準化対象
標準化対象
製品モジュール、部品
プロセスマイルストーン定義、DRチェックリスト、設計手順、役割定義
情報技術情報、設計基準、QCDデータ
ツールITシステム、試作・評価設備

 今回は、本連載の主題である3Dデータプロセス改革に、最も関連の深いプロセスの標準化を行う際に、考慮すべき4つのポイントについて述べる。4つのポイント、すなわちこれから説明する「VPFT」は、それぞれ表2のような内容を示すと共に、検討を行う順序が「V→P→F→T」であることも表している。

表2●開発設計プロセス標準化の視点
(1)V (Focus on Business of Value)価値業務への注力度向上
(2)P (Design Platform Process)プラットフォーム開発プロセスの構築
(3)F (Front Loading)リスク/課題の発見/解決のフロントローディング
(4)T (Use Tools)ツール活用