4K/8K放送の実証試験、運用環境を整備

 次世代放送推進フォーラムでは総務省の検討会に習い、これまでNHKが8K映像に用いてきた呼称「スーパーハイビジョン」の定義を拡大。4K映像も同じスーパーハイビジョンの呼称で普及促進の取り組みを進める。

 検討会のロードマップでは、2020年に「希望する視聴者が、テレビによって4K/8K放送を視聴可能な環境整備」を目標にしている。次世代放送推進フォーラムの理事で運営委員長の久保田啓一氏(NHK)は、「"テレビによって”と明記した部分が、とても重要なことだ」と力説した。これまでのように単に公共施設などで4K/8K映像を実験的、体験的に視聴できるだけではなく、放送ビジネスとしてコンテンツ提供者やテレビ・メーカーなどが取り組める環境を構築するという決意の表れだろう。

 具体的には、運営委員会の下に設けた「技術委員会」と「コンテンツ委員会」、「周知広報委員会」が、それぞれ技術検証と、コンテンツ制作、広報活動を担い、4K/8K放送の準備作業を進める。その中心となる事業が、2013年度に開始する「次世代衛星放送テストベッド事業」だ。

 総務省の関連予算で約31億円が充てられる見通しの同事業では、4K/8K映像のコンテンツ制作や放送システムの仕様を検証。実証試験の運用環境を整備する。撮影用のカメラや映像編集システム、動画圧縮技術などの開発を後押しし、番組制作者に機材を貸し出すなどの取り組みで多様な4K/8K映像の番組制作を促す。

NTTが開発したHEVCの符号化回路。FPGAを用いて試作した。今後、この回路をベースに1チップ化する技術開発が本格化する。
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 総務省の検討会では、4K/8K映像を視聴者に届ける具体的な伝送路として、衛星放送、ケーブルテレビ、IPTVを挙げている。中心となる衛星を用いた試験放送については、2014年に東経124/128度CSを4K映像の放送に活用、2016年をメドに打ち上げが検討されている新しい東経110度CS(左旋)を4K/8Kの試験放送に用いることを想定している。これらの実証実験の取り組みを通じて、2020年の本放送開始に向けた準備を進める計画だ。

 4K/8K放送でカギとなる動画圧縮では、次世代技術「HEVC(High Efficiency Video Coding)」に対応したLSIの開発を推進する。4K/8K映像は、現行のHD映像よりもデータ量が格段に多い。それを衛星放送の限られた周波数帯域で効率的に放送するには、従来よりも高い圧縮率の動画圧縮技術が必要になる。

 HEVCは、デジタル・カメラなどで現在主流になっている動画圧縮技術「H.264/MPEG-4 AVC」の約2倍の圧縮率を実現している。H.264と同等の画質をほぼ半分の符号化速度で、地上デジタル放送で用いている動画圧縮技術「MPEG-2」と比べると同じ画質をほぼ1/4の符号化速度で実現できる。(関連記事「次世代動画圧縮『HEVC』」)