前回前々回はテレビを扱った。それもカラー・テレビである。実は1950年代に三種の神器と言われたテレビは白黒。色が無かった。当時、この白黒テレビと洗濯機と冷蔵庫の三つが文化的生活を象徴していた。恐れ多くも三種の神器と呼ばれた。冷蔵庫が変えた世界は既に考察した。そこで、今回は洗濯機。

 洗濯機とは電気洗濯機。この登場以前は盥(たらい)で洗濯。盥は洗濯槽。木製やジュラルミン製。この中に水と衣服を入れて洗う。もちろん、洗剤も使う。そして、洗濯板。でこぼこの部分に洗濯ものを押し付けてゴシゴシ。以上、昭和の言葉を羅列しても平成生まれには??? 世が世なら、今年は昭和88年。平成25年のコラムとしては、電気洗濯機以前は「手洗いによる肉体労働だった」で留めておこう。

 この肉体労働の主役はお母さん。割烹着を着たお母さん! 平成に戻り、電気洗濯機の登場は主婦を肉体労働から解放した。神器に先行して開発された電気炊飯器とならぶ解放の立役者である。水と洗剤と衣服を入れてタイマーをセットすれば後はモーターが洗濯槽を撹拌してくれる。もっとも、洗濯と一言で言っているが、洗浄、水洗い、脱水、の3段階が現在の洗濯の定義。洗浄は洗剤を使って衣服の汚れを水に移すこと、水洗いは、衣服に残った洗剤を落とすこと、そして脱水は水を絞ることである。初期は3段階とも人手で切り替えていた。脱水に至ってはハンドルで上下のローラーを回して絞る仕組みだった。このローラーが劣化して粘着して使えなくなった。ねえ、お母さん!

 それが電磁弁にリンクカム機構の導入で全自動化された。もっとも、洗浄時間、水洗い時間と回数、脱水時間などは洗濯機を使う消費者が決定しなければならなかった。もっとも、これでは細かすぎる。そこで、汚れ度合い、洗濯物の量に基づいてお母さんが選ぶのはハイ、ミドル、ローの三種類だった。

 これでは洗濯時間が長すぎたり、逆に短すぎて汚れが落ちなかったりという問題があった。そこで、マイコンが導入されて洗濯が完全自動化された。1980年代後半に現れたファジィ洗濯機と呼ばれた自動洗濯機は洗濯物の量を図るトルク・センサと水の透明度を図る光センサを与えられ洗濯時間の決定が適切に行えるようになった。