弾性変形を解析可能に

 [2]の弾性変形や振動を取り扱う機能も、実製品の挙動をより正確に表現するのに必要なことから、開発が進んでいる。

 弾性変形を扱うのに通常用いるのは「モード法」と呼ばれる方法だ。機構解析に先立って部品の固有値解析を実施して、固有の振動(変形)モードを算出しておき、このモードの組み合わせによって、複雑な変形を表現する。機構解析実行時の計算負荷が小さくて済む。ただし、モード法では部品に何かの物体を押し付けて曲げるような、局所的な変形は表現できない。

 機構解析と同時に構造解析を実行するなどして、変形を直接計算する方法もある。それだけ計算時間がかかるが、局所的な変形を表現できる。例えば、「RecurDyn」(韓国FunctionBay社)は、モード法だけではなく、部品の変形を有限要素法によって直接計算する機能も有する。「DAFUL」(韓国VirtualMotion社)は、機構解析と直接積分法による構造解析を組み合わせて計算できる。

 「Adams」ではモード法を利用可能な他、挙動を定式化できる梁(ビーム)要素によって変形を表現する方法も使える。最新版には新たな梁要素が加わり、非線形な挙動も数式で表現できるようになった。微小な振動や変形については従来の梁要素、細くて長いワイヤのように大きく変形する部品には新しい梁要素、と使い分けられる。

動力伝達部品を用意

 [3]の機械要素部品モデルについては、MSC Software社が既にAdams用に歯車、ベルト、チェーン、軸受などの機構解析用モデルを製品として提供しており、今後さらにケーブル、モータなどのモデルも供給する予定だ。ユーザーはこれらの部品モデルを利用して、機構モデルを手早く構築できる。従来は、部品モデルもユーザー自身が細かく定義する必要があった。

 これらの部品は、例えばベルトで動力を伝達する機構において、例えばベルトの張りをどのくらいに調整すれば良好に動作するかといった解析に使える。減速装置であれば、モータが急に始動したときに悪い衝撃や振動が発生しないか、あるいは大小2つのモータでそれぞれどのような違いが生じるか、といった検討が可能になる。

 このとき、部品と装置全体は1つのモデルに統合しなくてもよい。それぞれ別個に機構解析を実行して、その途中結果を互いにやり取りする“ 連成解析” が使える(図2)。これにより、計算時間を短縮できる。

図2●「Adams」(米MSC Software社)の画面
図2●「Adams」(米MSC Software社)の画面
機構全体の挙動(左)と細部の部品の挙動(右)を互いに連携させながらシミュレーションすることで、より細かい挙動を計算できる。
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