エコカー(環境対応車)のベンチャーとして期待の高かった米Fisker Automotive(フィスカー)が経営難に陥っている。2013年3月には創業者で同社の中心人物であったHenrik Fisker氏が辞任した(写真1)。
次いで4月には、米連邦破産法第11章(チャプター11)に基づく倒産の手続きに関する助言を破産専門の法律事務所から受けた。一部を除き大半の社員が解雇されるなど、同社を巡る状況は厳しさを増すばかりだ。
一方で、フィスカーと同じエコカーベンチャーの米Tesla Motors(テスラ)は2010年に株式の公開に漕ぎ着け、2013年に入ってからは第1四半期決算で創業以来初の黒字化を達成した。まだ予断は許されないもののテスラが順調に走り続けている状況と比べると、フィスカーの失速は対照的である。フィスカーはなぜ失速したのか。
基幹部品である電池の供給が停止
フィスカー失速の最大の理由は、基幹部品である電池パックの供給が停止してしまったことだろう。同社は米A123 Systemsのリチウム(Li)イオン電池セルおよび電池パックを富裕層向けの高級プラグインハイブリッド車(PHEV)「Fisker KARMA」で採用していた(写真2)。
フィスカーの問題はリチウムイオン電池の供給だけに留まらない。KARMAは出荷の開始が当初の予定より約1年半も遅れた。出荷開始後も電池パック周辺や冷却ファンなどでの不具合が相次いで発覚、その都度リコールを余儀なくされた。
天災という不運にも見舞われた。2012年10月下旬に米国東部を襲った大型台風「サンディ(Sandy)」によって、ニューヨーク港の倉庫に停めてあった輸送中のKARMA約300台が洪水による浸水で被害を受けたのである。
被害総額は30億円以上。同社の広報担当者は損害保険をかけていたため事業への影響は軽微と説明したが、そのうちの16台が発火、消失したことも同社の事業運営に少なからず影響を与えたと見られる。