上司との交渉は部下に見せておく
浅沼 ここで話題を変えて、上司との交渉方法についてお尋ねしたいと思います。リーダー自身にも上にリーダー(上司)がいるわけですが、リーダーとリーダーの上司の間で意見の違いがある場合、自分たちのチームの目標を守るために、ときには駆け引きしたり戦ったりする必要に迫られます。そんな時、上司との一種の軋轢を部下に見せたほうがいいのか、それとも見せない方がいいのか、リーダーは悩んでしまいます。「リーダーは部下に背中を見せなければならない」と本書で何度か出てきますが、やはり見せた方が良いのでしょうか。
美崎 自分が率いているチームが向いている方向と、上司の向いている方向が合っているかどうかを、まず冷静に見極めることが大切です。両者のベクトルが合っていない場合はそれを正さなければならないのですが、「正さなければならない」ということを部下も気づいている場合、リーダーである自分がベクトルを正そうとしていることを部下に示さなければなりません。
ただ、自分のチームのベクトルと自分の上司のベクトルが合わないからといって、単純に「上司が悪い」ということにはなりません。上司にとってみれば、あなたのチームは複数あるチームのなかの一つです。予算やリソースを割り当てるときも、あなたのチームが最優先とは限らないのです。その中であなたのチームの優先度を上げてもらうのがリーダーであるあなたの大切な役割なのですから、上司とのやりとりは部下にも見せておきましょう。
もちろん、上司にぶつかっていって、すごすご戻ってきたらチームのメンバーはやる気がなくなってしまいます。私自身も上司から差し戻されることの方が多かったのですが、ここはリーダーとしての正念場です。突き抜けていくリーダーは必ず経験するステップなのだ、と思い定めてください。