1989年から日本企業の国際化を研究テーマに、これまで300以上の海外拠点を訪問した。だが、その間に日本企業の根本的な体質は変わらなかった。現在も新興国で成功できる状態ではないという思いを強くしている。

 日本メーカーの新興国攻略は、日本の人材やノウハウを現地に持っていく「移転型」であり、現地で生産に携わる労働力を期待していた。1990年前後の段階では、移転型で海外展開するのは当然だった。

 だが、それが全く進化しないところに課題がある。2000年になってもう一度、日本メーカーの海外拠点を訪問すると、担当者は「これから数年かけて、現地化を進める」と、10年前とほぼ同じことを話していた。海外拠点はたくさん持っていても、その中で悩んで、大変な思いをしながら汗を流しているのは、日本人だけだ。

 現地の技術者を育てたり、現地のニーズに合った研究開発を進めたり、現地子会社の地位を高めたりするような取り組みはほとんど見られなった。この状況は、2005年に再び訪問した際にも変わっていなかったのである。(談)