ユニットやプリント配線基板の間を結んで電力や信号を伝える配線用部品(ハーネス)は、複数の電線(ケーブル)を束ねたもの。これを誰が設計するかは企業によって異なる。ある企業は電気回路を構成する部品であるとして電気(エレ)設計者が設計するし、別の企業では部品との空間の取り合いを扱うため機械(メカ)設計者が担当することもある。どちらの設計者でもなく、生産技術者の役割としている企業もある。

 生産技術者が担当することがあるのは、以前は試作品ができた後で、紐などを用いて現物でハーネスの経路と長さを決めることが多かったためである。ハーネスの経路は平面ではないため、図面からでは長さは正確には分からず、長すぎたり短すぎたりするハーネスになる恐れがある。つまり、ハーネスの設計は開始のタイミングがかなり後にズレてしまうため、設計よりも生産設計の範囲に含めた方が都合の良い場合があった。

 これに対し3D-CADを用いれば、空間内の経路と長さを少ない誤差で決められる。従ってハーネスの設計を前倒しして、メカ設計やエレ設計と並行して作業できる。それを狙って、多くの3D-CADがハーネスや配管の経路をモデリングするための機能や、始終点位置から経路を自動生成する機能を備えるようになっている(一覧表)。

一覧表●3D設計が可能なハーネス設計ツール(3D-CADを含む)
製品名 開発会社 概要 連絡先(URL)
Advanced Routing/HarnessDesign エンブレム SolidWorksに完全に組み込んだ状態で使うツール。ハーネスのタイプと始終点のコネクタを指定すると、最短ルートのハーネスを自動で作成する。ルートはマウス操作で編集できる。ハーネスの一部区間だけを先行して設計可能。 エンブレム
Autodesk Inventor 米Autodesk社 ルールベースで経路を作成する機能がある。「AutoCAD Electrical」などの電気設計ツールから読み込んだfrom-toリストを使用可能。 オートデスク
CATIA - Electrical Wire Routing 2 (EWR) 仏Dassault Systemes社 CATIA V5の経路指定モジュールの情報と、from-toリストからハーネスのモデルを作成する。ユーザー企業の設計基準に従って、経路を最適化する機能がある。 ダッソー・システムズ
CATIA Piping and Tubing Design 仏Dassault Systemes社 CATIA V6の配線、配管設計ツール。ルールに基づいてインテリジェントに部品を配置していく機能を用いて、経路の定義から詳細設計までに適用可能。 ダッソー・システムズ
EPLAN Harness Expert 独EPLAN Software & Service 基本的には2次元ツールだが、3次元設計も可能になっている。配線ダクト内のケーブル占有率に上限がある場合に、設計案がその上限を超えていないかどうかを監視する機能がある。ケーブル加工専用機向けにデータを出力することも可能。 システムメトリックス
ICAD/SX iCAD 回路図や結線情報などからハーネスを自動生成する機能がある。干渉チェックなどにより、周辺の構造部品について検証するのが目的。 富士通
NX Electrical Routing 米Siemens PLM Software社 NXの「Routing Application Architecture」に基づいた配線ツール。ハーネスを自動的に設計、解析する機能を備える。from-toリストの読み込みと書き出し、ハーネス製造用3Dモデルの自動作成機能がある。 シーメンスPLMソフトウェア
PTC Creo Piping and Cabling Extension 米PTC社 フラットケーブルの自動配線、または対話操作による配線などの機能を備える。形状の自動フラット化を含み、製造指示用の文書を作成する機能がある。 PTCジャパン
Solid Edge Wire Harness Design 米Siemens PLM Software社 Solid Edgeでハーネスを作成したり、経路を指定したりできるモジュール。ハーネスが太すぎたり、曲げ半径が小さすぎるなど、設計ルール違反がある場合にリアルタイムで設計者に警告を出す。ハーネス設計中にケーブル切断長さや被覆を除去する長さのレポートを作成する。 シーメンスPLMソフトウェア
SolidWorks Routing 米Dassault Systemes SolidWorks社 構成部品間を接続する配管、チューブ、ハーネスによるパスを、特殊なサブアセンブリとして作成する。SolidWorks Premiumのアドイン。 ソリッドワークス・ジャパン
VPS/Harness デジタルプロセス モデル上で通過点を指定することでハーネスを作成。ハーネス形状を柔軟体として表現しており、動的干渉チェック機能を使用して、可動部の動作や組み立て時/分解時にハーネスのかみ込みが生じないかなどを検証できる。 富士通
デジタルプロセス
エンタープライズハーネス ランドマークテクノロジー 3Dモデル上でハーネスの通過点をクリックしていくことでハーネスの経路を作成できる。既に設定した経路に分岐を加えられる。ハーネスとケーブルの詳細を表示しないため、メモリーの使用量が非常に少なく、ケーブルが1000本以上に及ぶ大規模な回路でも適用できる。 ランドマークテクノロジー
ハーネスデザイナー ランドマークテクノロジー from-toリストを基にハーネスを自動配線する。ルートは通過点の指定などにより編集できる。あらかじめ経路を決め、そこにハーネスを通すという指定も可能。 ランドマークテクノロジー