近年、日本では「規制緩和」という言葉をよく耳にする。規制緩和とは、市場における様々な制限を取り除いて、市場の参入条件を緩めることにより、市場をより開かれた自由なものにすることだ。市場参入に関する規制を取り払うと、新しく市場に参入できる企業が増え、企業間の競争が激しくなるので、企業はより品質の良いサービスやモノを作るように努力する。それにつれて、新しい技術や発明が生まれる可能性が高まることから、イノベーションを起こす1つの有効な手段としても注目されている。しかし、規制緩和は、既得権益を奪うので、反対や抵抗の勢力も強い。日本ではなかなか進んでいないとの印象だ。

 一方、海の向こうにある中国では、規制の緩和とは逆に「緩和規制」、いわゆる緩和を規制するケースが少なくない。つまり、規制がないまたは緩い市場に対して、何らかの規制で、政府や行政が期待する市場の秩序をつくるのである。緩和規制は、規制緩和と比べて、進みやすい、そして市場の活性化とイノベーションを阻害すると思われるかもしれないが、実は必ずしもそうではない。今回は、電動バイクを例に、この点について紹介しよう。

北京で見た電動バイクの光景

 先月、北京で泊まっていたホテルの近くを歩いていて、気付いたことがあった。その辺りは大使館や高級ホテルが多い東三環エリアである。そこで筆者が目を奪われたのは、高層ビルや大使館の建物、走っている高級車ではなく、街路や道路中に存在した数多くの電動バイクだった(図1)。

図1●北京東三環エリアの住宅街辺りで撮影した電動三輪車と電動自転車
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図2●自転車修理ショップの入り口に置いているコイン型の充電器
黄色の装置が充電器
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 大都市の北京でもこんなに普及していたのは意外だった。中小都市ではもっと多いのだろうと想像できる。その旺盛なニーズに応じて、市内には充電できるところも増えている。例えば、図2の自転車修理ショップには、充電器が設置されていた。コインを入れると、簡単に充電できる。筆者の知らぬ間にインフラの整備も進んでいた。