太陽電池からの直流の電力を交流に変換し、家庭内や電力系統へ電力を送り出す役割を担うパワー・コンディショナ。2012年末以降、このパワー・コンディショナが極度の品不足に陥っていました。日本メーカーに断られ、海外メーカーに「海外工場から空輸してくれ」と頼む顧客もいたそうです。

 私は今回の品不足を、固定価格買い取り制度の買い取り価格が変更になる前の、駆け込み需要が中心だと思っていました。しかし一部のパワーコンデョショナ・メーカーによると、「2013年4月に入っても足りない状況が続いている」といいます。来年以降に再び買い取り価格が下がる前に、太陽光発電システムを導入しておきたいというユーザーが多いようです。

 パワー・コンディショナの需要が拡大する中で、技術開発も活発になっています。太陽電池の導入量が増加すると、電力系統の負荷が増えるからです。停電時に確実に運転を防止したり、瞬間的な電圧の低下時でも運転を継続したりする機能の搭載が進み始めました。さらに今後は、蓄電池などの他のエネルギー機器の設置が進むため、そうした機器との連携も重要になります。

 他のエネルギー機器と連携しながら、電力系統の安定化に貢献する――。これまで一方的に電力を送り出してきたパワー・コンディショナが、電力を双方向にやり取りする制御を担うようになるのです。パワー・コンディショナが、エネルギー機器の“要”として変貌する将来を見据えて、関連メーカーが動き出しています(日経エレクトロニクス2013年4月29日号の解説「太陽電池用パワコン、エネルギー機器の要に」参照)。

 ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。老舗メーカーを取材した際、「2005年に補助金が打ち切りになり、苦しい時代が続いた。事業継続を断念しようかとも考えた」との話を聞きました。その後、2009年に余剰電力買い取り制度が、2012年に固定価格買い取り制度が始まり、再び息を吹き返すことができたとのこと。苦しい時代に注力した研究開発の成果は、これから世に出てくるようです。パワー・コンディショナの進化が楽しみです。