SSMの期待効果と特長

 SSMの直接的な期待効果は、設計工数や設計変更工数の低減、品質問題の削減、そして評価工数の削減である(図3)。

 開発設計工数や設計変更工数の低減は、製品仕様・設計仕様と製品構造の関係がシンプルな設計を行い、モジュール・部品数の削減や開発設計規模の低減、開発設計で考慮すべき影響範囲の低減を図ることで実現する。

 品質問題の削減は、評価項目への影響を網羅的に考慮した設計を行うことによる品質問題の作り込み防止と、評価体系の詳細化、評価項目の具体化を行うことによる評価項目の抜け漏れ防止によって実現する。評価工数の低減は、製品仕様・設計仕様と製品構造の関係がシンプルな設計を行うことによるモジュール・部品数の削減や、製品構造と評価体系の関係から評価の重点化、すなわち重点評価項目を中心に構成した評価体系の確立により実現する。

図3●SSMの対象と期待効果
図3●SSMの対象と期待効果
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 SSMの間接的な効果としては、以下の点が挙げられる。

・日常的に推進している個別の製品開発設計において、開発設計者、評価者が製品構造に着目してQCD(品質・コスト・納期)向上を図っていくことになり、モジュール・製品の共通化を進める際に必要な製品構造で思考するスキルの向上や基盤整備を図れる
・製品構造と評価体系の関係性が明示されたナレッジとして蓄積されることで、技術力が向上する
・各部門が責任を持つ評価項目と製品構造の関係が明確になり、開発設計における部門連携を行いやすくなる

 また、SSMの特長としては、以下の点が挙げられる。

・試行錯誤を伴う開発設計者の思考プロセスに合った手順のため、開発設計実務適用のハードルが低い
・個別製品開発設計プロジェクトから適用可能であり、短期的に効果を獲得できる
・製品構造や評価体系の階層を用いてマイルストーンを定義することにより、プロセス定義の精度を向上できる

 特に、技術資産としての利用は現場の技術者には非常に好評である。複数の開発設計者でSRMを作成すると、なぜこの部品がこの仕様に影響するのか?という疑問が生じる。あるモジュール・部品が特定の製品・設計仕様に影響を与えているのに、その事実を知らない開発設計者がいるということは、品質問題のリスクとして最も重大な点の1つである。それをSRMで浮き彫りにし、共有できるのである。