オールIHIのほぼ1/4の生産量

 タイでの生産実績はリーマンショックの影響などは受けたものの、順調に生産を拡大させてきた。2010年の約90万台から2013年は約135万台にまで伸びる見通しだ。オールIHIの中でほぼ1/4の生産量をまかなっていることになる。

 タイでの売れ筋車種であるピックアップ・トラックのほとんどにIHI製のターボチャージャが搭載されている。納入先は、トヨタ自動車、三菱自動車、いすゞ自動車、日産自動車、タイAutoAlliance(Thailand)社(AAT社:米Ford Motor社とマツダの合弁会社)、米General Motors(GM)社と多岐にわたる。これまでの連載で述べてきたように、日本の自動車メーカーがタイでの生産を拡大させると同時にIHIも事業規模を拡大させてきた。自動車以外でも農業機械向けにクボタにも納めている。

 タイ工場には、第1、第2工場が稼働しており、フル稼働状態が続いている(図1)。そして現在、第3工場が量産開始に向けて準備に入っている。第3工場はキーパーツであるタービンシャフトなどの専用工場であり、2016年のフル操業時には年間に200万本を生産する計画で、第2工場の80万本と合わせて年産能力は280万本になる見通し。ここから中国や欧州の工場にタービン軸を出荷する。

図1●ターボチャージャを生産するIHIのタイ工場
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 中国にもターボチャージャの大きな工場を持つが、キーパーツの技術移管については知的財産保護の観点から慎重に対応する必要があり、中国には生産を移管しなかった。

 業績は好調だが、自動車メーカーと同様に現地調達率のさらなる向上などが課題として浮上している。これまでタービンシャフトに関しては日本から運んできたものをタイで加工して溶接していたが、2013年秋からタイでの調達に切り替える。軸受も同様に現地調達化する。コンプレッサ・インペラについては、既に鋳物を海外調達しタイで切削加工している。タービンハウジングは既に大半がタイでの現地調達品であり、一部がインドからの輸入だ。高級バージョン(高出力用)の可変式ターボチャージャでは、現地調達率が現時点で50%程度なのを、こうした取り組みによって2013年秋までに80%前後にまで高めるという。

 このターボチャージャはエンジンの周辺部品であり、IHIの強みは自動車メーカーと一体となって開発してきた点にある。車の心臓部であるエンジン開発はまだ日本国内に主力部隊がいるメーカーが多いが、現地最適開発の流れの下、エンジン開発も海外に移る流れが今後強まりそうだ。そうなると、IHIは生産だけではなく、開発もグローバル化していく課題が浮上してくるだろう。