モジュラー設計が必要とされる背景

 本連載の前回までテーマとしてきた「3D設計改革の功罪」では、市場ニーズの多様化が3Dモデリングコストの増加に影響を与えていることを説明した。これに続き今回は「モジュラー設計」を取り上げる。モジュラー設計は、設計工数を大幅に削減するための有力アプローチの1つであり、多くの製造業がこれを検討・実践していることが知られている。

 モジュラー設計が必要とされるのは、その背景でのような連鎖が生じていることに起因している。

  市場ニーズの多様化
 ⇒製品のスペックやバリエーションの増加
 ⇒製品を構成するユニット(ASSY)や部品の種類数の増加
 ⇒調達品目や生産工程種類、生産ライン数、管理コストの増加を加速
 ⇒品質問題や開発遅延の発生、開発コストや製造コストの増大
図●モジュラー設計が必要とされる背景
図●モジュラー設計が必要とされる背景
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 この連鎖の中では、市場ニーズへきめ細かく対応していかないと売上を確保できないが、売上が伸びても収益性の悪化を止められない。製品の多品種化は、スケールメリットの恩恵を受けられない方向に状況を加速させるのだ。そのため、市場ニーズへのきめ細かい対応と収益性確保の両方の達成が求められている。モジュラー設計の必要性が高まっているは、このようなことが背景となっているのだろう。

 モジュラー設計は、製品多品種化と部品種類削減を両立する解決策であると考えられている。これは単に部品やプラットフォームを共通化するだけでなく、モジュールを“組み合わせ”ることで製品バリエーションの多様性を飛躍的に高め、市場ニーズに対応しようとする考え方である。最近では、某自動車メーカーがモジュラー設計の推進をさらに強化し、コスト競争力を高めることを公表した。

 自動車メーカーは、プラットフォームの共通化により部品種類を削減するというアプローチを採用していることが一般的に知られているが、本事例では、車両構成の“組み合わせ”で、小型車から大型車までの共通化範囲を拡張しているところが特徴的だ。

 次に、多様な製品展開と部品種類の削減を両立する、モジュラー設計の解決原理について説明しよう。