東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏

 ここからは、直感的にまず「こうだろう」という当たりをつけるセンスというか、数学力というものがいかに大切かというお話をしたいと思います。

今からゲームをやります

 最近の風潮として、計算機がとてもパワフルになっていますから、分からなければ計算機に全部ぶっこんで出てきた結果をそのまま使おうということがあります。それが、いかに危険か。それを分かってもらうために私がやっているのが、「計算機は計算ミスを起こす」という、ここで紹介する授業です。大学1年生向けの一番初めにやる授業です。

 今からゲームをやります。0~1の間で好きな小数を思い浮かべてください。例えば、0.1とかです。そして、その思い浮かべた数字が0.5より小さい時は2倍してください。思い浮かべた数字が0.5以上であれば、2倍して2から引いてください。その後は、計算結果が0.5より小さい時は2倍、0.5以上なら2倍して2から引くという計算をずっと繰り返してください。そんなゲームです(スライド1)。

スライド1
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 例えば、最初に0.1と思い浮かべます。そうすると、これは0.5より小さいから2倍します。0.2です。次にまた同じことをやります。0.2は0.5よりまだ小さいですから2倍します。0.4ですね。0.4はまた0.5より小さいので2倍します。0.8は今度は0.5よりでかくなったんで、2倍して2から引くと、「2-1.6」ですから0.4ですね。再び0.5より小さくなったんで2倍しますから0.8ですね。あれっ? 0.8はさっきやったなということで、後は0.8、0.4、0.8、0.4とずっと繰り返しになるんです、無限に。というふうになるはずなんですが、これを計算機でやるとそうはならないんです。例えば何でもいいですけど、エクセルでやります。