国内製造業の2012年度第3四半期(10~12月期)の決算結果が出揃いました。主要な製造業では、多くの企業の業績が回復傾向にあります。世の中では、2012年末から始まった円安基調が業績回復の主な要因とされています。もちろん、特に自動車業界などでは、円安基調がプラスに作用していますが、実はこうした外的要因だけで業績が押し上げられたわけではありません。その答えは「技術」にあります。シャープ、ソニー、トヨタ自動車、マツダなどのメーカーは、独自技術を手駒に中核事業の競争力を取り戻しつつあり、そのことが各社の業績回復の原動力になりました(日経ものづくり2013年3月号のスペシャル・レポートの関連URL)。

 とりわけ電機業界では、円安の影響が業績に顕著に結びつきにくい構造になっています。シャープなどの大手電機メーカーの収益が悪化した2011年度第3四半期の時点で、既に1米ドル=80円を切る円高基調が定着していたため、為替変動に影響を受けにくい経営基盤の構築を目指していたからです。例えば、ソニーは、米ドルでは為替の営業利益への感応度がほとんどない状況です。為替への感応度をなくすことができるのは、同社が電子機器などの製造を米ドル・ベースの拠点で行っているからです。

 このように電機業界では製造の海外移転が当たり前になりつつある中、カギとなるのが、海外のEMS(電子機器の受託生産サービス)やODM(相手先ブランドによる設計・生産)企業との距離感です。スケールメリットを最大限に生かす形で、電子機器を中心に世界の生産基地になりつつあるEMS/ODM企業と良好な関係を構築できれば、これほど心強い存在はありません。