今回の同意命令で、FTCの基本姿勢として「FRAND特許のライセンスを受ける意思がある者に対してITCの排除措置命令や裁判所の差し止め命令を請求する行為を禁じること」が明示された。この姿勢は、前述のEC決定と同一と言える。FTCは当初、和解発表から30日間、一般からの意見書を受け付けるとしていたが、多数の要望に基づき、受付期間を2月22日まで延長した。最終的に、Apple社、Microsoft社、Ericsson社、米Qualcomm社、米American Intellectual Property Law Association(米国知的所有権法協会)、米Intellectual Property Owners Association(米国知的財産権者協会)を含む25の企業・団体が意見書を提出した。その中で多くの問題点が浮き彫りにされている。以下に主な論点をご紹介する。

■Google社はいまだ連邦裁判所での必須特許に基づく差し止め請求を取り下げていない。同意命令の条文解釈の仕方で、その必要はないとGoogle社が考えているふしがある。例えば、Google社が差し止め請求できる例外として、ポテンシャル・ライセンシーが同じく必須特許の侵害でGoogle社に対して差し止め請求してきた場合の規定がある(Apple社、Microsoft社)
■FTCは、FRAND条件でライセンスを受ける意思がないポテンシャル・ライセンシーに対しては差し止めを適用できることを認めている。ポテンシャル・ライセンシーがライセンスを受ける意思があるかどうかを判断することは難しい(Qualcomm社)
■FTCの同意命令について解釈のずれが生じている。Apple社が交渉中の必須特許保有企業の中には、ポテンシャル・ライセンシーは特許の有効性、標準必須性、侵害の有無、実施可能性について議論することを制限されないと同意命令で定められていることから、それらの証明責任はライセンシー側にあると主張する者が現れている。確かに同意命令では、ライセンシーはそれらについて議論する権利を有することは認められているが、それらの証明責任が誰にあるかについては語られていない(Apple社)
■必須特許であるか否かを判断するのは難しく、それを最終的に決定できるのは裁判所しかない(Apple社、Microsoft社)
■仲裁手続きが規定されているものの、両当事者がライセンス条件や仲裁の範囲で合意することは難しいので、仲裁は最初からうまくいかない。Google社のケースを越えて、一般に適用されることには反対する。必須特許問題は個々のケースで事実に即した形で慎重に検討されるべき(Qualcomm社、Ericsson社)
■同意命令で定められている両当事者間の交渉手順では、なかなか合意に至らず、必須特許所有者が差し止め請求できるようになるまでの期間が長すぎる。(Qualcomm社、Ericsson社)