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鈴木 智行氏(ソニー 執行役 EVP)<上>

最後の砦、撮像素子で勝利する

大石 基之, 大槻 智洋=NE特約記者、台北科技市場研究
2013/03/05 00:00
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出典:日経エレクトロニクス、2010年5月17日号 、pp.99-100 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 ソニーは,デジタル・カメラやビデオ・カメラ向けの撮像素子市場で,画素ピッチの短縮やCMOSセンサの機能付加といった技術の進化を自ら先導してきた。これが,ライバルとの競争を有利に進めてこられた大きな理由だ。
 だが,それでも同社の撮像素子事業は盤石とは言えない。韓国や台湾の企業が安価な品種から順にCMOSセンサ市場を席巻している。メモリやディスプレイなどと同じ構図を、撮像素子では決して繰り返さない。ソニーで撮像素子部門を長く率いてきた鈴木智行氏は,こう固く決意し,強烈なリーダーシップを発揮してきた。
 鈴木氏が同社の半導体事業本部 副本部長を務めていた時代に『日経エレクトロニクス』が聞いた「自信と方策」を2回にわたって紹介する。(聞き手は大石 基之,大槻 智洋)

――韓国Samsung Electronics社や米OmniVision Technologies社と手を組む台湾TSMC社などが,撮像素子市場で勢いを増しています。特に携帯電話機向けCMOSセンサでは,ソニーを大きく超える個数シェアを確保している。こうした状況をどうとらえていますか。

 今挙げたようなライバルには,絶対に負けたくないですね。我々には,日本の半導体業界における最後の砦(とりで)だという自負があります。光の利用効率が高い裏面照射型CMOSセンサの量産出荷で先行するなど,現在も相応の実績を上げている。

†裏面照射型CMOSセンサ=配線層が存在していない側から光を当てるCMOSセンサのこと。BSI(backside illumination)型ともいう。光が配線層にぶつかって,光電変換素子であるフォトダイオードに光が入射しないという現象を抑制できる。画素ピッチが2μm未満のCMOSセンサにこの構造を適用すると,一般にS/Nが2倍になる。

すずき ともゆき 1954年生まれ。1979年,ソニー入社。1985年にCCDシステム部門に配属されて以降,一貫して撮像素子事業に携わる。2000年にCCD事業部長,2002年にイメージセンサーカンパニーのプレジデントに就任。2005年には,コーポレート・エグゼクティブ SVPに就く。業務執行役員 SVP コンスーマープロダクツ&デバイスグループ(CPDG)半導体事業本部 副本部長を経て、現在は執行役 EVPとして半導体事業、デバイス事業、アドバンストデバイステクノロジープラットフォーム担当。(写真:加藤 康)

 もし撮像素子の競争が単に物量だけ,コストだけの勝負だったら,我々の思いなんて通じないでしょう。我々は,ライバルほどの大規模工場を持っていないし,持てないですから。でも幸い,撮像素子は画質で勝負できる。まだまだ顧客に喜んでもらえる機能を追加できる。

 我々はもとはといえばCCDで,顧客の支持を得てきました。にもかかわらず,CMOSセンサに大きく舵を切った。CCDでは成し得ない映像表現が,CMOSセンサでは可能になるからです。画素数という空間解像度だけならばCCDで十分だったでしょうが,CMOSセンサはそこに出力速度という時間解像度の向上をもたらす。

 CMOSセンサであれば,例えば最近,話題の3次元(3D)動画の撮影も簡単にこなせます。一つのCMOSセンサに右目用と左目用の画像を交互に,それぞれ60フレーム/秒で出力させればいい。CCDでは極めて高いコストを掛けない限り,不可能な芸当です。もちろんCMOSセンサを使うにしても,その前に何らかの光学素子を置く必要はあるけどね。

 今60フレーム/秒と言いましたが,人間はどうも240フレーム/秒くらいまでなら差が分かる。ならば,さらなるハイ・フレーム・レートに対する需要が生まれてもおかしくはない。フルHDといっても1フレームは200万画素程度と,静止画より大幅に少ない。だからデジタル・シネマでは4K2Kといった規格が生まれている。つまり,空間と時間の解像度を上げればこれからも需要を喚起できるはずです。

 こうした画質や機能における「進化の軸」がある限り,我々は業界の先頭を走り続けられます。

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