どうしてLenovo社か

 中国政府系研究機関である中国科学院からスピンアウトして1984年に誕生したLenovo社は、設立20年の2004年に米IBMのパソコン事業を買収し、それを弾みに大きく躍進した。米Hewlett-Packard(HP)社との差はわずかで、2012年の出荷台数でみたシェアは世界2位。2013年はトップの座を獲得する可能性が極めて高い。シェアだけでなく、業績も好調だ。

 しかし、Lenovo社はそれに甘んじていない。タブレットとスマホは、パソコン市場からパイを奪っている。このため、世界のパソコン市場は急速に縮小しつつあるのだ。Lenovo社の好調は、競合他社のシェアを奪取することで実現したもの。このままでは継続的な成長は見込めない。このように、手放しでは喜べない状況にあるため、成長戦略を急いでいるというわけだ。

 Lenovo社は、タブレットとスマホへの反撃を早くも始めている。2012年のCESで展示した、ディスプレイが360°回転するノートパソコン「Yoga」は、その最初のトライと言える。その後、長年かけてパソコン市場で構築したブランド力を強みに、タブレットとスマホを浸透させる「PC+」戦略を掲げた。Table PCは、その一環である。

 Table PCは、PCの延長線として、テレビ、パソコン、タブレット、スマホの次の「第5スクリーン」という位置付けで、新たな顧客価値を創り上げている。テレビ事業もこの「PC+」戦略の一部。すでにアンドロイドOSを搭載したスマートテレビの販売に乗り出している。シャープの中国テレビ工場の買収に関する報道もあるように、この分野の開発・販売を強化するため、M&Aも積極的に進めている。

 激しい競争の中で発展してきたLenovo社は、イノベーションに対する理解も深めている。米Intel社のチップだけに目を向けることから、エンドユーザーが何を欲しているのか、どんなハードとアプリがあればそれを実現できるのかに、発想を転換した。Yogaはどちらかというと、Intel社のUltra-PC戦略に乗って誕生した製品だが、Horizonは、Lenovo社の独自戦略から生まれた製品と感じられる。

 Lenovo社は、独自の発想が業界に受け入れられるように、エコシステム(企業間連携)の構築にも最初から注力した。開発キットとアプリストアを提供し、既に複数のゲーム会社もHorizon向けゲームの開発に参入すると表明している。