予定調和を排除する即興性の付加

 ここで想定以上に前説に時間をかけてしまい不評を買ってしまったという失敗はありましたが、少しずつ場があたたまり、後半のワールドカフェ形式のダイアローグにつなげました。ワールドカフェは4~5人単位でテーブルを囲み、他の人が話した話題を模造紙などに書きながら、特定の問いについて対話を進める手法です。

 かなりあ社中が投げ掛けた問いは、「そもそも社内失業って何ですか?」「社内失業は私たちにとってどんな意味合いがある?」という二つでした。ワールドカフェのダイアローグでは、本当に多くの意見が出ました。それを聞きながら、かなりあ社中の3人組はちょっと変わった行動に出ます。主催者で司会進行役だというのに、ダイアローグの最中に突然立ち話を始めたのです。

書きながら話す
ダイアローグではさまざまな意見が出た
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 実は、この「主催者がダイアローグの途中で緊急ミーティングを始める」という光景は、我々が開催するイベントで日常的に見られるものです。「え? なんだそりゃ?!」と思う読者がいるかもしれません。

 突然ですが、読者の皆さんは、ジャズはお好きですか。もしくは演劇の舞台に立った経験はあるでしょうか。ジャズや演劇の世界では、演者による即興が繰り広げられることがあります。英語では「Improvisation」です。私自身音楽が好きで、高校時代には少し演劇もかじっていました。だから、「即興」のライブ感がすごく大事だと感じています。

 前回のコラムで、ダイアローグ・イベントでは「予定調和を回避することが大切」という話を書きました。対話による新しい気づきやアイデアは、想定外の産物のことの方が多い。ですから、司会進行役も「プログラム通りにやる」のではなく、場の雰囲気に合わせて「即興性を盛り込む」ことが大切です。これが新しい何かを生むと信じています。