「未来のビジョンについてパッションを持って語り、メンバーが共有し、バックステップ思考でロードマップを描く」という思考が成功するプロジェクトでは意識的ではないにしろ行われているのです。
これを意識的に行ったのがスティーブ・ジョブズだと聞いたことがあります。1990年代にアップルでは、クローズドのメンバーで数十年先の未来の姿、ビジョンを描いて共有し、それからが現実のものになるであろう技術の開発のタイミングを勘案し、未来からステップバックしてロードマップを描いたというのです。
Terra Motorsの徳重社長も、同様に将来の姿をビジョンとしてメンバーと共有し未来からバックステップして現在の行動に反映していると思えたのです。彼の特長として、彼は非常にロジカルな思考も同時に持ち合わせておられ、一つひとつの顕在化した現実の問題をシンプルに、そしてロジカルに、さらにスピード感を伴って解くということも実践されています。
このように考えると、日本が得意な技術開発だけではなく、問題開発や環境開発、そして認知開発という全てのフィールドにおいて、全ての開発を将来のビジネスに繋ぐため必要なものが見えてきます。
未来のビジョンを共有すること、さらにそこからバックステップするという思考の時間軸を逆転することで「総論賛成各論反対」の芽を潰し、メンバーが将来の姿を実現するためのシンプルなロジック思考ができるような環境を用意できるというのがバックステップ思考の利点です。これを現実のものにするためには、パッションを持ったリーダーがそこに向かって導くというプロセスがまずできるかどうかにかかっているといっても過言ではないでしょう。
その後のロジカル的左脳思考は、日本が得意とするものである故に、これからのビジネスにおけるバックステップ思考の重要性はますます高まると考えています。そして、問題開発から問題解決、環境開発、認知開発に至る一連のフェーズを共有し解くことで、日本から新しいB2C産業が生まれる基盤ができるのではないでしょうか。
生島ブログ「日々雑感」も連載中。
中国ビジネス書の翻訳出版本である「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃」の監修・解説も担当した。