数学は相対論を語る、リリアン・R・リーバー著、水谷淳訳、1,995円(税込)、単行本、360ページ、ソフトバンククリエイティブ、2012年1月
数学は相対論を語る、リリアン・R・リーバー著、水谷淳訳、1,995円(税込)、単行本、360ページ、ソフトバンククリエイティブ、2012年1月
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 ひとつ目の坂道は「テンソル」だ。
 著者のリリアンも「ここは難しいからねぇ」と考えたのだろう。14章の「テンソルとは何か?」から24章の「曲率テンソルは何に使うのか?」まで、本書の3分の1を「テンソル」の説明に当てているのだが、それでも難しいことに変わりはない。白状するが、私(評者)は、この坂道を登れず、坂道の上までワープさせてもらった。

 ワープを悟られないように読み進んでいたところ、残りページも少なくなってきた27章で、「付いていけない」読者に次の章を読み飛ばすことを勧めている文章を見つけた。

 いやいや、とっくに付いていけなくなってるんですよ、リリアンさん!

 続く28章のタイトルがふるっている。「困難に打ち勝つ」というのだ。ここまで難しい式を「こんなの簡単ですよね」と展開してきた著者が、ここはとにかく難しいぞ! と宣言しているに等しい。
 この28章で、相対論解説は難しさの頂点に達する。

 Tech-On! 読者のなかには、この最後の坂まで登りきる「選ばれた」人がいるかもしれないが、私のように途中でワープしてしまう人も多いことだろう。
 しかし、自力で登攀できなくても、頂上からの見晴らしは味わうことができる。