図面に国内ユーザーの要望

 「Autodesk Inventor」(米Autodesk社)の板金部品設計機能は、展開図面を作成したときの細かい表現などに特徴がある。板金部品モデルと通常モデルの区別があり、専用コマンドによって作成していくのは他のCADと同じ。ただし、板金部品モデルに対して通常のコマンドも併用でき、途中段階で板金としては成立しない形状を経由できる。

 Inventorでは展開状態の3Dモデルと図面に、元の板金部品モデルにない表現を加えられる。板金の折り曲げ後に角部になる部分などは、切り抜きのときの輪郭を小さな半径の円弧状にすることがある。このような形状は、板金部品モデルに入れずに、展開モデルに入れられる。

図5●Autodesk Inventorでの展開図面
図5●Autodesk Inventorでの展開図面
国内ユーザーの要望による山折り線と谷折り線の区別や、細かく開いた多数の穴など、フィーチャを図面上で見やすく表現できるのが特徴である。
[画像のクリックで拡大表示]

 図面では、例えばルーバのように加工時に微妙な変形を伴う図形は、正確に投影しても図面としての意味があまりない。パンチ中心位置を明示した上で模式的な図形に差し替えることで、分かりやすい表現にできる。折り曲げの山折りと谷折りを異なった線種で表現可能であり、この機能は日本国内のユーザーの要求を取り入れたものだ(図5)。

 展開時の計算では、曲げによって板金が伸びる程度を示す「Kファクタ」を用いる*3。このKファクタの値は曲げごとに設定できる。以前のバージョンでは、1個の板金部品の中では全部の曲げが同じKファクタだったが、これも国内ユーザーの要望で改良した。

*3 Kファクタ 板金の曲げでは内側が縮み、外側が伸びる。板金内部のどこかに伸び縮みのないところがあるはずで、通常は板厚中央よりやや内側。この位置を表す数値がKファクタ。