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エディターズ・ノート

生き残るのは「越境者」

  • 大下 淳一=日経エレクトロニクス
  • 2013/02/01 05:00
  • 1/2ページ

 国内唯一のDRAMメーカーだったエルピーダメモリが2012年2月末に経営破綻してから、まもなく1年がたちます。同社の破綻時、その要因に関する分析をTwitterなどで発信して大きな反響を呼んだのが、元 東芝のフラッシュ・メモリ技術者で現 中央大学教授の竹内健氏です。同氏は最近都内で開かれた「ナノ・マイクロ ビジネス展(旧称 マイクロマシン/MEMS展)」の記念講演会に登壇し、「日本の半導体、ナノ・マイクロ技術が世界で勝ち残るために」と題して講演しました。日本の半導体産業の勝ち残り(「生き残り」の方が適切かもしれない、と講演では修正されました)に向けた処方箋を説いたものです。

 竹内氏はまず、半導体ビジネスの本質が「集積度の増加(低コスト化)→価格下落→市場成長(投資回収)→巨額投資による微細化→集積度の増加→…」というサイクルにあることを指摘しました。その上で、パソコンからスマートフォンへのシフトに伴って、DRAMでは微細化による価格下落に見合う市場成長を望めなくなった。そのことがエルピーダ破綻の本質的な要因だと語りました。同氏は、エルピーダがコスト競争力の高さで知られる台湾の生産子会社を持っていたことを例に挙げ、「DRAMのコスト低減手法を含め、サプライ・チェーンはうまくマネージできていた」と評します。問題だったのは、市場が伸びていないにもかかわらず、微細化による価格下落だけを招いてしまったことだ、という分析です。

 ここで竹内氏が引き合いに出したのが、「ユニクロ」でした。同社は、製品の低価格化によって市場を広げるのと同時に、日本市場の飽和を受けて海外展開を積極的に進めている。ビジネスにおける鉄則は、半導体でもカジュアル・ウエアでも変わらない。

 さらに、近ごろの円安傾向を受けて「エルピーダを倒産させた要因は円高だった」との指摘があるとし、そうした見方は「真っ赤なウソ」だと断言しました。代わりにエルピーダの失策として同氏が指摘したのは、グラフィックスDRAMのようなスマホ時代にそぐわない技術にこだわったこと、成長著しいNANDフラッシュ・メモリに経営資源をシフトできなかったこと、などです。結局は「マーケティングの失敗だ」という主張です。

 続いて竹内氏はシステムLSI業界に話を移し、ルネサス エレクトロニクスが経営危機に陥った要因を分析しました。システムLSIでは、1990年代を境に垂直統合から水平分業の時代に転換したというのが通説。これに対して同氏は、「システムLSI業界の現状に照らすと、水平分業という潮流に合わせて専業化すれば生き残れるというのは幻想にすぎない」と語りました。水平分業ではなく、「水平統合」の時代だというのです。

 水平統合とは、水平分業関係にある市場プレーヤー同士が強固に連携すること。例えば、台湾TSMCのようなファウンドリーと、米Qualcomm社などのファブレスは、従来に比べて相互の連携を強固なものにしつつあります。ファウンドリーは設計技術者を大幅に増やし、ファブレスはデバイス・プロセス技術者を増やしている。これにより、設計とデバイス・プロセスを相互に合わせ込むという方法で、「垂直連携」ともいうべき協力関係を構築しているわけです。

 こうした状況においては、米Intel社などの例外を除けば、1社がすべてを自前で賄うことはできません。そこで、何らかの提携や事業統合が必要になる。ただし、その提携や事業統合は「補完的であることが成功の必要条件」だと竹内氏は力説します。日立製作所、三菱電機、NECの半導体部門を統合してできたルネサスは、互いに似た技術・製品を多く保有していたため、補完関係にあるとはいえなかった。それが経営統合の失敗の大きな要因になったという主張です。

 ルネサスをはじめとする日本企業同士の経営統合について竹内氏は、「規模の経済」ならぬ「規模の不経済」を説きました。例えばシステムLSIでは、経営統合によって技術や製品の品種が増えると、経済性の低下を招きやすくなる。ましてや、顧客である機器メーカーは半導体メーカー同士の統合を望んでおらず、むしろ多くのベンダーからの部品調達を志向します。結果として、顧客がリスク分散に動くことで、統合後の会社は売り上げの減少を招きやすい。こうした背景から、ルネサスの場合は「1+1+1になるはずだった売上高が、1に収束してしまった」(同氏)。昨年来、ルネサスと富士通、パナソニックのSoC事業の統合構想が噂されていますが、これに対しても竹内氏は懸念を示します。「同じような失敗は繰り返すべきではない」と。

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