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変化するマザー工場のあり方

最終回:ものづくり悲観論を超えて

  • 中川 功一=大阪大学大学院経済学研究科講師
  • 2013/01/28 00:00
  • 1/4ページ

 「兵站(へいたん)線の伸び」をキーワードにしながら、本コラムでは、加速する海外展開に合わせてマザー工場のあり方をいかに変えていくべきかを議論してきた。最終回となる今回は、これまでの議論や紹介事例を踏まえ、国内ものづくりの今後について、幾分のエールを込めた総括を行いたい。

グローバル展開で求められる母子関係のバランス

 いま、日本の製造業企業はこれまでにないほどに海外展開が求められる時代が来ている。「国内回帰」を志向した大手電機メーカーが苦境にあえぎ、他方で積極的な海外展開を行っているハイテク部品・素材・設備メーカーが好調であるのは象徴的である。事実として、著者が行った研究では、海外展開を積極的に行った企業ほど業績が良好になる傾向があることが明らかになっている。世界市場の中で、日本は国内総生産(GDP)比でわずかに10%を占めるのみ。かつ日本市場規模がほぼ横ばいである一方で、世界市場が大きく成長しているとなれば、海外展開を積極化した方が業績が良くなるのは、ごく自然な結果だろう。

* 筆者による1997~2007年の10年間を対象とした調査に基づく。大手日系製造業359社の業績と海外展開との関係を検証した結果、積極的な海外展開を行っているほど売り上げ・営業利益が大きくなることを示した。詳細は「グローバル分散拠点配置の競争優位」(中川功一,『MMRC ディスカッションペーパー』,No.388,2012年)を参照。

 このことを前提としたうえで、本コラムは、「積極的海外展開を支えるための、国内ものづくり体制」すなわちマザー工場システムが重要だと考える。上述の通り、一部大手電機メーカーが行った国内「だけ」のものづくりにこだわるやり方では、世界市場を得る機会を失ってしまう。しかし、このことは国内生産拠点がもはや不要ということを意味しているわけではない。日本企業の国内ものづくり能力はやはり世界に誇れるものである。マザー工場システムをうまく使いこなすことができれば、世界市場をターゲットに、国内ものづくり能力と海外現地のコスト競争力や現地対応力を結合した生産活動を行うことができる。マザー工場システムはまさしく、今の日系製造業が抱える「国内のものづくり能力は高いが、オペレーションコストゆえに国際競争力が維持できない」という課題を解決する手段だと考えられるのである。

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