一生食いっぱぐれないための エンジニアの仕事術 、椎木一夫 著、798円(税込)、新書、232ページ、光文社、2012年11月
一生食いっぱぐれないための エンジニアの仕事術 、椎木一夫 著、798円(税込)、新書、232ページ、光文社、2012年11月
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 椎木氏のアドバイスはもっと柔軟だ。相手の仕事以外の顔がよくわかれば、仕事の関係もうまくいく。だから、付き合いは重要、というのだ。仕事に酒の席が利用されることを非難する人もいるかもしれないが、欧米のビジネスマンだってホームパーティーなどのプライベートな場を仕事に利用している。飲み会や懇親会は積極的に利用すべし、と述べている。

 このひと言は個人的に胸にズシンと響いた。そういえば、ヘンに潔癖だった私は、会社に入ったときの新人歓迎会で、部長に挨拶に行かなかった。課内の先輩と談笑しているうちにお開きになったのだが、あとで聞いた話では、部長が「今年の新人は変わっているね。挨拶に来なかったよ」とあきれていたそうだ。

 いま思えば目上の人にこちらから挨拶に行くのは社会人として常識なのだが、その後も潔癖性はつづき、気がつけば出世と縁遠いエンジニア生活を送ってしまった。
 「仕事以外の場での付き合いも重要です」という椎木氏の言葉は、ズシンと来るのである。

 この箇所にかぎらず、椎木氏の指摘は、読者一人ひとりがうすうす気づいている弱点を明らかにしてくれる効果がある。

 若手エンジニア向けに書かれているが、中堅・ベテランエンジニアにもお勧めしたい一書だ。

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■著者紹介 浅沼ヒロシ(あさぬま・ひろし)
ブック・レビュアー。
1957年北海道生まれ。
日経ビジネス本誌、日経ビジネスオンライン連動企画「超ビジネス書レビュー」(2011年9月終了)のほか、「宝島」誌にも連載歴あり。
ブログ「晴読雨読日記」、メルマガ「ココロにしみる読書ノート」の発行人。
著書に『泣いて 笑って ホッとして…』がある。
ツイッターアカウント:http://twitter.com/syohyou