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中国飲食サービス新時代の幕開け(3)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2013/01/21 00:00
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今回紹介する書籍
題名:海底捞你学得会
著者:楊鉄鋒
出版社:人民郵電出版社
出版時期:2011年8月

 今週は『海底捞你学得会』(海底撈から学べる)の3回目。中国の人気鍋料理チェーン店「海底撈」の成功の秘密を如何に顧客をつかむか、という点から見ていく。

 先週は、来店した客から如何に利益を上げるかという部分を見てきたが、今週は如何に客を呼ぶか、という点における海底撈の工夫をご紹介していきたい。

 本書に海底撈を象徴する面白い表現があった。海底撈の売りは「会話しながら食べる鍋」だというのだ。つまり、人との会食を楽しむ場全体を提供するのが海底撈の店づくりのコンセプトだということだ。そう考えると海底撈の有名なサービスすべてに合点がいく。

 筆者が海底撈に行ったときにも面白いサービスがあり、会食相手と話が弾んだ。ラーメンを頼むと各テーブルの前でラーメンを伸ばして鍋に入れてくれるのである。それだけで会話が盛り上がる。また、筆者もこのサービスについて多くの人に話したし、筆者が「海底撈に行った」というと「麺、たのんだ?」と聞かれることも多かった。このように人に話題を提供するサービスというのも海底撈のコンセプトのうちなのだろう。

 また、海底撈は店舗面積の20%を順番待ちのスペースにあてているというが、順番待ちの間も楽しく快適に過ごすことによって、食事の時間がより楽しくなる。このようにして「会話をしながら食べる鍋」というコンセプトを実現するために海底撈のすべてのサービスは提供されているのだ。

 では、「会話しながら食べる鍋」を好むのはどんな客だろう。少なくとも腹を満たせばいいという層ではない。本書では海底撈の成功の一番の理由は顧客層を絞り込んだことだと分析している。少々高くてもおしゃれな店で会話を楽しみたい層、それは若いホワイトカラーである。いわゆる「北漂(北京戸籍ではないが一般的に高学歴で一定の職業についていたり、発展のチャンスに恵まれていたりする層)」が海底撈のターゲットだ。本書ではターゲットを絞る際の指標を性別、年齢(老人、中年、青年、幼児)、地域、使用目的(ビジネス、公的行事、余暇、日常)、価格などで分けており、ターゲットは一つに絞るべきで、二つ以上の客層を相手にするべきではないと言っている。その上で自らの客層に何を提供できるかを徹底的に考えるべきだというのだ。たとえばマクドナルドは青少年層をターゲットとしており、そのために場所、商品、環境、音楽、セールス方法などのすべてを決めている。そのため青少年の客は知らず知らずのうちにマクドナルドに親近感を感じ、離れられなくなるのだという。

 海底撈も同じように客層を若い「新都会人」に絞り込み、成功を収めている。また、商圏にも大変な関心を払っている。一般的に「火鍋」と言えば重慶が有名だが、海底撈がチェーン展開するときに最初に選んだのは重慶ではなかった。なぜ火鍋のメッカである重慶を避けたのか。それは重慶では火鍋が飽和状態であり、またそのビジネスモデルが固定化していたからだ。低価格路線を歩む店が多く平均的な小売値は北京の半額程度であったという。そこで勝負して勝ったところで北京での利益に遠く及ばなかったであろうし、また、そのような環境の中で今のような海底撈のブランドが育ったかどうかも疑問である。このように海底撈は常に利益を上げるためどうするか、ということを中心に考え、大胆かつスケールの大きい選択をしてきた。それが海底撈の成功の秘密の一つであろう。

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