「源流プロセス」の「PDM層」「PLM層」の役割を明確化する

 源流プロセスの区分[2][3]は、言ってみれば従来のPDM、PLMと同じ要件のデータ管理層であって、改めて説明する必要は少ないと思うが、少し異なる点があるのでそこにのみ触れておく。

 [2]のPDM層での管理対象は、設計ツールの成果物データであると同時に、最終結論に至るまでの仕掛りデータでもある。それらは、[1]の現場層での業務の一部も含まれるので、現場層の設計ツールとPDM層間をつなぐ仕掛けとして追求すべき点がある。それは、現場層[1]で策定した標準化体系(モジュラー・アーキテクチャ)に則ったルールによって設計ツールを駆動する仕掛けや、標準化に則ってナビゲーションしてくれる仕掛けなどの構築である。さらに、結果的には採用されなかったが貴重なアイデアを含むCADデータを捨てるのでなく、知見とともに参照・活用できる仕掛けを作っておくことも有効だと考えている。

 区分[1]の業務層において業務プラットフォームを通じて作られるデータ(仕様書、帳票、会議録、実験評価資料、備忘録など)は、[2]のPDM層で管理するのではなく、[1]のP3LM のシステムとして管理する、と考えるのがよい。その理由は、PDMのツールとP3LMのツールは、ほとんどの場合異なるものにすべきだからである。区分[3]のPLM層は、ベース機種としてのBOMを保持し、後述する次のプロセス[6]にシステマティックに連携できるようにしておく。BOMは量産型か個別受注型か、それらのハイブリッド型かによって、最適な持ち方にしておく。

「商品化/製番化プロセス」ではベース機種のマスタ情報を活用、業務ムラをなくす

 「源流プロセス」でベース機種のデータ・情報生成体系を確立しているのであれば、理想的に言えば、後のフェーズでは商品化プロセスや製番化プロセスとして、多様な派生機種(量産型の場合)や受注機種(個別受注型の場合)を粛々と設計し、納期通りに上市したり顧客に納入したりできることになる。当然ながら理想通りにはいかないのが現実であるが、理想を追求し続ける必要はある。そうでないと、理想を実現させる競争相手にいずれ負けてしまう。

 その意味で、このプロセス図中の区分[4][5][6]における重要な目的(要件)は、3点に絞ることができる。

 1点目は、源流のベース機種のデータ・情報を有効に活用する仕掛けである。図2の[6]の区分の左上に書いた、企画・引き合いから“仕様とのマッチング”をした後、次に[3][2]で管理されているベース機種のデータ・情報をコピーすることになる。量産型と個別受注型ハイブリッド的なものづくり企業も多いので、その場合はベース機種のBOM情報を、[4]の量産型BOM/個別受注型製番BOM情報、またその設計データ[5]としてシステマティックにコピーし、活用できる仕掛けが必要となる。

 2点目は、前号でも触れたが、ビジネスのターゲットとしている業界固有の規格がある場合、その仕組みを業務プラットフォームとして同化させることである。例えば、国際安全規格や、米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)などに対応するために、規定された仕組みを[6]の「商品化/製番化のP3LM(業務プラットフォーム)」として埋め込むのがよい。

 3点目は、[6]の「商品化/製番化プロセスのP3LM(業務プラットフォーム)」の目的として、誰が遂行しても“ムラ”“ムダ”のない業務ができること。さらに、その過程(進捗や課題・その改善状況など)が見えて、マネジメントできることである。[1]の「源流プロセスのP3LM(業務プラットフォーム)」に比べて、設計手順(Procedure)の標準化がはるかに容易な分、「商品化/製番化のP3LM」は実現しやすい。

 「商品化/製番化のP3LM(業務プラットフォーム)」化の業務プロセス単位は、その意味からも[1]よりは広めのスコープとして構わない。