ロケフリワールドの構築を目指す

 2005年秋にパソコン対応のロケフリ「LF-PK1」を国内市場に投入したことで、話題を提供すると共に販売台数も増えていた。だが、まだまだ発売から半年であり、初期段階で経費はかかる時期であった。マーケティング部隊もリストラされて人員も少なく売りやすい商品に手一杯で、ロケフリは宣伝されることもなく、力を入れることもできなかった。要するに、売れるだけ売るという他力本願な状況だった。このため、私を含めたロケフリの開発部隊は、マーケティングにかなりの時間を割かざるを得ない状況だった。

 リソースや人員が限られている中で、2006年の計画は種々の端末をロケフリ端末にする「ロケーションフリーTVワールド」の構築を行うことを目標としていた。このため、具体的には以下のことを実施することにしたのだった。

(1)ロケーションフリーTVワールド構築のため、携帯型ゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」などの自社商品だけでなく、他社にもロケフリ機能をライセンスしていくこと。さらに、通信事業者を含めたマーケティングを協業すること。つまり、他社の力を借りて、市場を創るのである。

加賀電子が開発したMac用クライアント・ソフトウエアの画面
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(2)新機種の開発:デザインを一新し、更なる操作性の簡素化と画像符号化(H.264)の採用した次期モデル「LF-PK20」と、PCだけでなく離れたところのテレビにも映像を映すことができる「LF-BOX1」の開発を始めていたのである。これらの新商品は、2006年秋に発売する計画だった。

加賀電子とACCESSにライセンス供与

 まず、(1)のロケフリ機能のライセンス供与の取り組みについて紹介する。これに、最も強い興味を持っていていたのが、加賀電子とACCESSだった。加賀電子は米Apple社(当時はApple Computer社)の「Mac OS X」に、ACCESSは米Microsoft社の「Pocket PC(Windows Mobile 5.0)」にそれぞれ対応した商品を開発した。両社と共同で2006年5月18日に発表会を実施し、無事に発売にこぎ着けたのだった。

ACCESSが開発したクライアント・ソフトウエアを搭載したPDA
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 Mac OS Xへのアプリケーションの対応を行ったのは、ソニーではロケフリが初めてであった。加えて、当時はWindows対応パソコンでテレビ視聴機能付きのものはあったが、Macではテレビ機能は存在していなかったため、Macユーザーに大変喜ばれたのだった。さらに、ACCESSは、Windows Mobileに続いて、Linuxなどに対応していく計画を明らかにしていた。いよいよ、ソニーだけでなく、他社を巻き込んでのロケーションフリーワールドを構築できる機会が整ってきたのだった。