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中国ネット販売界の風雲児(4)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/11/26 00:00
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今回紹介する書籍
題名:刘强东注定震惊世界
著者:尹鋒
出版社:北京聯合出版公司
出版時期:2012年8月

 今週は『刘强东注定震惊世界』(日本語訳:劉強東は世界を震撼させる)の第4回。今回は京東商城を中心にしながら中国インターネット販売業界の変遷について見ていきたい。

 今回取り上げる企業は日本の読者にはまだなじみの薄い企業が大半だが、台湾Hon Hai Precision Industry社がシャープの買収に名乗りを挙げたり、中国Haier社が三洋電機から譲り受けたブランド「AQUA」を積極的に展開したりするなど、いつ何時中国の企業が日本で生活する我々の生活に関わってくるかわからないこの時代、是非中国のインターネット販売業界の歴史と現状を知っておいていただきたいと思う。

 2004年に京東商城がインターネット販売に参入した時にはすでに「第1世代」と呼ばれる業者たちがしっかりとした足場を築いていた。

 第1世代の業者とは淘宝網(現在の「天猫」)、eBay易趣などである。淘宝が業務を開始したばかりのころは中国のインターネット販売の80%がeBay易趣によるものでほぼ独占状態であった。ちなみに淘宝網はカリスマCEOの馬雲率いるAlibabaグループのB2Cサイトであり、eBay易趣は米国のインターネット販売の雄eBayと中国のインターネット業者が共同で設立したサイトだが、京東商城は特に淘宝網と熾烈な争いを繰り広げることになる。Alibabaの馬雲は中国インターネット界の巨人とでも言うべき人物で本書の帯にもこのように書かれている。「誰がインターネット販売の王になるのか。これまでの10年は馬雲だが、これからの10年は劉強東か?」このことからわかるように馬雲と劉強東は今後も比較され続けることであろう。

 また、京東商城のインターネット販売開始時期には実店舗販売に注力していた家電量販店の2大巨頭「蘇寧」と「国美」もまたそれぞれ2008年ごろからインターネット販売に参入し始めた。電子製品から始まって家電の販売もその中心としていた京東商城にとってこの両者のインターネット販売参入は大きな危機だった。

 だが、京東商城はその取り扱い範囲を広げることでさらなる発展を遂げてきた。2005年には京東商城は日常用品の取り扱いを計画し始めている。その理由は日常用品の方が京東商城の主戦力である電子製品よりも利益率が高いことにある。また2009年にはその延長線上として家具、台所用品、腕時計、装飾品から帽子まで扱うようになった。その結果、京東商城は電子製品販売時代とは異なり「家庭向け」のサイトとなった。

 また、京東商城の扱う範囲はそれだけにとどまらず、2010年には書籍の販売にも乗り出している。中国で書籍販売サイトといえば当当網が強力な存在であり、全世界で隆盛を誇るAmazonさえも当当網比べて弱い印象だ。京東商城はその当当網とも熾烈な価格競争を続けている。

 また、京東商城ではファッションなども扱い、まさに「中国のAmazon」への道を突き進んでいる。その一方で物流経路の問題や過当な価格競争の問題など中国のインターネット販売業界はいまだ多くの問題をはらんでいる。

 本書を読んでいると、京東商城のインターネット販売参入以降、際限なく価格競争が繰り広げられ、大変な緊張を強いられる状態だと感じられる。現在の中国市場では、業者は「独占か、さもなくば退場か」という状態なのだろうか。その答えは今はまだ得られていない。今後どのように棲み分けがなされていくか、あるいは棲み分けには至らずにいくつかの業者を残して多くのネット販売サイトが消えていくのか、まだまだ予断を許さない。

 以上、劉強東が1998年に起業してからの10数年を駆け足で見てきたが、これからも様々な業者が参入し、またインターネット販売の潮流も大きく変わりながら発展を遂げていくことと思う。本稿が、2012年現在このような状況である、という理解の一助になれば幸いである。

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