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中国ネット販売界の風雲児(1)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2012/11/05 00:00
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今回紹介する書籍
題名:刘强东注定震惊世界
著者:尹鋒
出版社:北京聯合出版公司
出版時期:2012年8月

 今週からご紹介するのは『刘强东注定震惊世界』(日本語訳:劉強東は世界を震撼させる)。本書は中国ネット販売大手の「京東商城」のCEO劉強東について書かれたもので、劉強東の生い立ちから始まって京東商城が2004年のネット販売参入からたった8年で業界2位の地位にまで上り詰めた歴史を描いている。

 本書の中で最も印象的だったのは、劉強東という人物の攻撃性と中国ネット販売業界の競争の激しさである。中国のネット販売業界は今やまさに群雄割拠の様相を呈している。劉強東自身も言う通り「第2世代」すなわち新参である京東商城が業界第2位になるまでどのような戦いがあったのか。本稿では本書の記述に従って劉強東を中心に中国ネット販売の歴史を見ていきたい。

 筆者が初めて劉強頭という人物を知ったのは2009年の『中国経営者』という中国の第一財経テレビのインタビュー番組。その中では「国美(中国の大手家電量販店)を脅かす存在」として紹介されており、筆者の劉強東に対するイメージは「家電の人」であった。ところが本書を読んで劉強東が率いる「京東商城」に対する自分のイメージが一面的なものでしかなかったことを知った(ついでに言えば「国美」に対するイメージもずいぶん一面的なものであったことも本書から学んだ)。まずは京東商城について簡単にご紹介する。この企業の公式サイトの企業紹介によれば、京東商城とはこのような会社だ。

京東商城は2004年に正式にネット販売に進出して以来、7年連続して成長率は200%を超えている。(中略)京東商城は現在6000万のユーザーを擁し、一万弱に上るショップが家電、デジタル通信機器、コンピューター、家庭用品、服飾、幼児用品、図書、食品など100万に及ぶ高品質な商品を提供している。一日当たりの受注数は50万、一日平均のサイト閲覧数は1億を超えている。

では、この京東商城の創業者であり経営者である劉強東とはどんな人物なのか。

 劉強東は1973年3月10日に江蘇省宿遷市の農家に生まれている。劉強東の実家は、陸地より水面の方が広いような場所にあり、中華人民共和国成立前は船による運送を生業としていた。曾祖父の時代には船を何艘も持ち、揚州の磁器を徐州に運び、その帰りに石炭を運んで生計を立てていた。当時の劉家は大変裕福で祖父は幼少のころより家庭教師がついていたほどだという。

 ところが中華人民共和国が成立すると劉家の財産は船を含めてすべて没収されてしまう。また、文革時代には、劉強東の祖父は迫害を受けた結果亡くなり、父はその影響で高校を中退せざるを得なくなった。父は17歳の時から父に代わって働き始める。その後、王紹侠という女性と結婚し1973年に劉強東が生まれた。劉強東には妹が一人いたが、生活は苦しく両親ともに働きに出ていたため劉強東はほとんど祖母の手で育てられた。だが、劉強東はそのころから周囲の子供たちのリーダーとなり貧しいなりに楽しい幼少時代と過ごしていたという。

 文革が終わり、1983年には農村にも「改革の風」が吹き始めた。彼らにも商売を始めるチャンスが訪れたのだ。劉強東の父は早速9トンの小舟を買い、祖父母に倣って船による運送業を始めた。

 このころのエピソードからも、後の劉強東の商才が垣間見える。劉強東はこのころ父母のやり方を見て「これじゃ商売が大きくならない」と考えた。どうして船会社をやって船を貸して儲けようとしないのだろう、と。だが、大人たちは彼の言うことを全く取り合わなかったという。しかし、今にして思えばこの頃から彼には商売を大きくするセンスがあったのだ。次回は、彼のその「商才」がどのように花開いていくかを見るために、劉強東の大学入試から起業を経てネット販売に参入するまでをご紹介する。

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